研究課題/領域番号 |
22K12754
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90030:認知科学関連
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
青山 敦 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 准教授 (40508371)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 神経科学 / 脳・神経 / 脳情報学 / 脳機能計測 / 多感覚統合 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,明瞭な空間情報をもつ聴覚・触覚・前庭感覚を主な対象として,自然には存在し得ない特殊環境(音が左右反転して聞こえる聴空間,手指への接触が左右反転して受容される触空間,重力方向が上下反転する前庭空間等)を最新のデバイスを用いて構築する.構築した各特殊環境への順応過程における脳活動を検討し,頑健性や適応性を創発する動的な多感覚統合機能のメカニズムを包括的に検討する.
|
研究実績の概要 |
本研究では,自然には存在し得ない特殊環境を用いて,外部環境の内的な再構成過程である動的な多感覚統合機能のメカニズムに迫ることを目的としている.2023年度においては,2022年度に引き続き,先行研究において明らかにした反転聴空間を用いて,動的視聴覚統合メカニズムの検証と更新を行った.具体的には,右側(左側)から来た音が左耳(右耳)で聞こえるような特殊環境への持続的な接触下で取得した脳計測データについて解析をさらに進めた.予測符号化理論によれば,脳は経験や知識に基づいて来るべき感覚入力を常に予測しており,その予測と実際の感覚入力との誤差を最小化するように外部環境に関する内部モデルを更新している.視聴覚連合野における低周波帯域の位相に同期した高周波帯域の振幅の特性から,反転聴空間への接触によって視聴覚統合の規則を内包するこの内部モデルが動的に最適化され,聴覚誘発活動の特性から,反転聴空間への更なる接触によって視聴覚統合の規則が静的に定着していくことが示唆された.次に,反転前庭空間の構築と同空間を用いた動的視前庭覚統合の検討を行った.具体的には,回転ベッドとVRゴーグルによって上下反転前庭空間を構築し,この空間へ断続接触した際の脳計測データの解析を行った.直立/倒立と視覚刺激の上/下に関する視前庭覚照合課題下においては,視覚刺激によらず倒立条件で視覚誘発活動の減衰が見られ,頭頂領域から後頭領域への変調の存在が示唆された.更には,多角的な検討を行うため,視味覚統合に関する知見収集も行った.反転触空間については依然として技術的な問題を克服する必要があるが,上記によって2024年度の研究に備えることができた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間の2年目である2023年度においては,2022年度に引き続き,左右反転聴空間を用いたアプローチの多角的展開を見据えて,反転聴空間を用いた動的視聴覚統合メカニズムの更なる検証と更新を当初の予定通り行うことができた.特に,視聴覚連合野における脳律動や聴覚誘発活動の特性から,予測符号化理論との関連性を見出すことができた.また,反転前庭空間の構築も当初の予定通り行うことができ,同空間を用いた動的視前庭覚統合の検討は当初の予定よりも早くに開始することができた.更には,視味覚統合に関する知見収集を行うことで,多角的検討を行えた.一方で,反転触空間の構築と同空間を用いた動的視触覚統合の検討については,依然として技術的な問題が存在する.2024年度においては,反転前庭空間を用いた動的視前庭覚統合の検討,反転触空間の構築と同空間を用いた動的視触覚統合の検討を可能な範囲で行っていく予定である.新型コロナウイルスのリスクについては依然として慎重に配慮していかなければならないものの,2023年度に得られた成果は本研究課題の核となるものであり,2023年度の計画はおおむね順調に実施できたと言える.
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度においては,反転聴空間を用いた動的視聴覚統合メカニズムの検証と更新で得られた知見を基に,反転前庭空間を用いた動的視前庭覚統合の検討,視味覚統合等の多角的検討,技術的に可能であれば反転触空間の構築と同空間を用いた動的視触覚統合の検討を進めていく.その上で,これまで得られた知見を総合し,特に予測符号化理論との関連性に注目して動的多感覚統合メカニズムの包括的検討を行う.ただし,反転触空間の構築と同空間を用いた動的視触覚統合の検討が難しければ,その他の特殊環境空間で議論をする.2024年度も新型コロナウイルスの脅威は続くことが予想されるため,実験参加者が関与する実施項目に関しては,状況に応じて臨機応変に対応する.
|