研究課題/領域番号 |
22K12768
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
|
研究機関 | 前橋工科大学 |
研究代表者 |
野村 保友 前橋工科大学, 工学部, 教授 (80237883)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | 短波赤外蛍光 / 早期乳がん |
研究開始時の研究の概要 |
従来あまり使われなかった短波赤外領域を医工学へ適用可能な電磁波の帯域として提案したい。これまでに蓄積された近赤外光(NIR)の無侵襲計測技術・経験・知識を生かして、生体透過性がNIRよりも高い短波赤外光(SWIR)を用いることで医工学の新しい取り組みとして次世代型ヒト生体深部イメージング技術を発展させる。この研究成果は従来法では検出困難であった微小な初期がん(超早期がん)の発見に寄与する。
|
研究実績の概要 |
令和4年度はシミュレーションと試作機の検討を主に進めた。生体組織の複雑な構造を忠実に反映したモデルで生体内の光の挙動を計算した。米国立医学図書館が公開しているデータベースVisible Human Projectの59歳米国女性(死因:心臓病)の全身スライス画像データから再構成された胸部をモンテカルロモデルに実装した(VHPモデル)。ここでは初期乳がんの大きさと深さを設定して、励起光と発光の光子の挙動を計算し、各帯域を評価した。光軸上に蛍光性初期乳がんを存在させ、体表面での蛍光強度を詳細に検討した。さらにシミュレーションで励起光源の走査による発光源の場所推定の可能性を指摘した。乳がんは乳房外側上部の乳腺、特に乳管が頻発部位とされるが、VHPモデルでは当該領域に乳腺構造を確認することができなかった。そのためVHPモデルでは頻発部位に発光源を設定できない点が明らかになった。 実体顕微鏡に接続した現有のInGaAsカメラではマウスリンパ節のSWIR蛍光イメージングは十分に可能であった。カメラが故障し修理が困難になったため、やや短波長領域のカメラを導入した初号機を試作した。ヒトの微小乳がん検出では空間分解能を向上させるために励起用のレーザー光を走査する仕様とし、ハイパー拡散蛍光キューブ(Hyper-diffusion cube, HDC)の多変量解析を用いた蛍光画像解析装置を確立した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
VHPモデルでは乳房外側上部の乳がん頻発部位に蛍光早期乳がんを設定できないという難点があり、新たな乳房モデルが望まれた。そこで新たに実装した乳房モデルは、カリフォルニア大学デービス校(UCD)の乳房専用CTを使用し、女性がうつ伏せになって乳房が垂れ下がった状態で撮影されたスライス画像のデータセットから作製された(USDモデル)。提供されているデータは計150人分の女性の片側乳房であったが、1人分のデータを取るためのシミュレーション時間が非常に長いため、2人分のデータのみを使用した。2つのデータは、乳房の外側上部に乳管構造があることを条件として、ランダムに選択した。 初号機の試作については、手動での撮影にかかる時間や撮影の精度など改善するべきところがあった。将来的な臨床応用などを考えた時に、これらの問題は解決しなくてはならない。そこで、撮影にかかる時間を大幅に短縮することと、撮影の精度を改善させることが可能である撮影の自動化を行った。撮影の流れは手動の時と同様だが、電動ステージを導入したことにより撮影時間の大幅な短縮、レーザーの走査が正確に行うことが可能になった。撮影は、従来の固定したレーザーからステージに励起光を照射し、ステージを動かすことでレーザーの照射位置を変える方式から、レーザーの照射位置を自動で移動させる形に変更した。撮影範囲は1.5 cm×1.5 cmの範囲で同様に行ったがデータの取得は一枚ずつから連続に変更した。また、レーザーの照射位置の移動については、電動ステージをステージコントローラで、与えたプログラムにより制御した。
|
今後の研究の推進方策 |
USDモデルを採用したことにより、乳がん頻発部位である乳房外側上部の乳管・乳腺に蛍光性早期乳がんを設定できるようになった。検出可能な乳がんの大きさや深さについて詳細に検討し、励起光走査により場所と大きさ推定の精度を評価したい。また仰臥位のVHPモデルは診断から治療まで無理なく利用可能な姿勢である。USDモデルは伏臥位で乳房部分の床に穴をあけ、ぶら下げて撮影画像化する。乳房外側上部の早期乳がん診断に対しては非常に効果的であるが、治療を考える作業スペースが限られる。そこで腫瘍マーカーに短波赤外蛍光ラベルと同時に光増感剤で修飾する可能性も検討したい。特定波長の光を照射するフォトダイナミックセラピーにつながり、伏臥位ベットの下での細かな作業を避けることができる。試作機についてはハイパー拡散蛍光キューブ(Hyper-diffusion cube, HDC)を得るためにマンモグラフィの透明な圧迫板の下から励起光のレーザー光を照射する。それを2次元走査すると、蛍光ラベルされたがん組織に励起光が到達した時にその深さに応じて散乱された蛍光が体外へ出る。蛍光散乱プロファイルを解析式にフィッティングして得られた超早期乳がんの深さに基づいてその大きさを推定したい。
|