研究課題/領域番号 |
22K12777
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
若尾 昌平 東北大学, 医学系研究科, 講師 (80511948)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | Muse cell / Phagocytosis / Differentiation / Somatic stem cell / 幹細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
一般的な幹細胞の分化は発生プロセスを模倣した様々なサイトカインによる細胞外からの刺激を段階的に処理することで、時間をかけて目的の細胞へと誘導する。我々はこの方法とは全く異なる新規の分化機構があることを発見した。それは幹細胞が傷害を受けて細胞死に陥った分化細胞を貪食し、転写因子など分化状態の維持に関わっていた因子を直接利用することで、貪食した細胞と同一の細胞種へ迅速にエラーなく分化する機構である。本研究は幹細胞が持つ貪食活性を利用した新規誘導方法を確立し、幹細胞生物学の考え方を大きく変える新しい概念を樹立すると同時に、幹細胞の産業応用を促進する技術開発を目指す。
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研究実績の概要 |
幹細胞が持つ貪食活性を利用した分化メカニズムを解明するために以下の検討を行った。 マウス由来心筋細胞、肝細胞、神経細胞からアポトーシスを誘導し、それぞれの死細胞断片をヒトMuse細胞に曝露させ、single cell RNA sequenceにより遺伝子発現解析を行った。その結果、心筋、肝臓、神経の断片を貪食したヒトMuse細胞はそれぞれの系統特異的マーカーの発現が上昇していたことから、ヒトMuse細胞の貪食による三胚葉性の分化が確認された。 さらに死細胞由来の転写因子をヒト幹細胞内でトレース可能にするために、マウスGata4プロモーターの下流でHA tagとGATA4が融合タンパクを発現するマウス心筋細胞を作製した。この細胞を薬剤処理にて細胞死を起こさせ、得られた死細胞断片をヒトMuse細胞に曝露させ、抗HA tag抗体を用いてChIP sequenceを行った。シークエンスデータをもとに解析を行った結果、GATA4転写因子が結合すると報告されている結合モチーフが検出された。さらにGATA4抗体を使用して共免疫沈降反応を行ったところ、RNAポリメラーゼIIやTFII転写因子が共沈したことから、取り込まれたマウス由来転写因子がヒトMuse細胞内で働いていることが確認された。 また、一般的な体性幹細胞である間葉系幹細胞や神経幹細胞もMuse細胞と同様貪食活性を持ち、これによって分化が促進されることが明らかとなった。一方で、その分化能はそれぞれ固有の能力に制限されており、間葉系幹細胞は脂肪や軟骨へ、神経幹細胞は神経やグリア細胞にのみ分化することが可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況として、 1. Muse細胞の貪食活性による三胚葉性細胞への分化について、single cell RNA sequenceによる網羅的な遺伝子発現解析を行った。 2. ChIP sequenceによる死細胞由来転写因子のヒトMuse細胞内DNA結合部位の解析を行った。 3. 貪食による間葉系幹細胞や神経幹細胞の分化促進の検討を行った。 これまで積み重ねてきた結果とこれらの内容をまとめて論文作成し、投稿からリバイスを経てCellular and Molecular Life Sciencesにアクセプトされた。
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今後の研究の推進方策 |
今回の報告では、主に心筋細胞・神経細胞・肝細胞の死細胞を利用して、ヒトMuse細胞から貪食活性を利用した新規誘導方法の確立とそのメカニズムの解明を行った。 また、一般的な体性幹細胞である間葉系幹細胞や神経幹細胞もMuse細胞と同様に貪食活性を持ち、これによって分化するあるいは分化が促進されることを明らかとし論文発表を行った。 今後は他のさまざまな細胞の死細胞片の暴露による誘導方法を確立するとともに、さらなる効率的な誘導方法の開発を模索する。
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