研究課題/領域番号 |
22K12778
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
三嶋 雄太 筑波大学, 医学医療系, 助教 (80770263)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | Cancer Immunotherapy / MPS / Cancer-on-a-chip / 血管内皮細胞 / 免疫細胞 / AI画像解析 / ユニバーサルiPS細胞 / CAR-T cell / iPS細胞 / マイクロ流体デバイス / CAR-T細胞 / 遺伝子治療 / Tancer-on-a-chip |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では申請者が開発に関わってきたがん模倣デバイス技術を応用することで 1)血管網を介したT細胞とがん組織との遠隔での相互作用 2)がん組織が形成する微小環境における近距離での細胞間相互作用の2点が評価可能な、新しいタイプの Tumoron-a-chip モデルの構築 に取り組む。この in vitroの評価モデルと光学的観察系を構築することで、T細胞ががん微小環境内の細胞へ与える免疫反応を評価可能にすることを目指す。このような、生体内を模倣した評価モデルが構築可能となれば、これまで明らかにできなかった事象にアプローチすることができ、有効性の高いT細胞製剤開発技術の飛躍的向上につながる。
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研究実績の概要 |
固形がんにおけるがん免疫において、体の局所に存在する腫瘍を特異的に傷害するためには、血液がんのそれとは異なり、免疫細胞が血管を通って遊走し、腫瘍組織への浸潤の後、標的を認識し、活性化と増殖を通して標的を傷害するプロセスが必要である。従って、固形がんにおける免疫T細胞の腫瘍への遊走能力や 浸潤能力がいかにして制御されているか、そのメカニズムと細胞傷害性効果との関係を明らかにすることができれば、固形がんにおけるがん免疫療法の抗腫瘍効 果を向上させることが可能と考えられる。 本研究は、実際のがん患者由来組織、マイクロ流体デバイス技術、iPS細胞技術の3つの要素を組み合わせることによって、がん腫瘍組織を模倣したデバイスの開発を行い、体外でT細胞とがん腫瘍組織の相互作用をイメージング評価可能な in vitro モデル(免疫細胞を評価可能なTumor-on-a-chip)を構築する。それと同時に、このモデルを利用することで初めて検証可能となるT細胞機能評価を行い、その有用性の実証を目指す。 本年度は、前年度に引き続き患者さんごとに事前に免疫細胞や免疫チェックポイント阻害剤の効果を評価できるようにするため、2つのがん患者由来オルガノイドを開発中のシ ステムに取り入れることを進めた。前年度中に2種類の患者由来オルガノイド(CTOS法にて樹立、F-PDOライブラリーから取得)を使用して、これまで構築してきた Tumor-on-a-chip を作製できるか、用いる細胞(がん細胞、iPS細胞由来血管内皮細胞、がん線維芽細胞)の含有率の条件検討を行い、血管網が評価可能な Tumor-on-a-chip を形成できる条件を最適化した。これらの条件を用いて、本年度は実際にこの2つの患者組織由来がんスフェロイドにiPS細胞由来血管内皮細胞で作られた血管網を接続することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本計画課題は具体的には以下の4つの問いに対し、T細胞の応答を解析することで段階的に進めていく予定である。 ① 免疫原性を抑制したiPS細胞血管網を用いたTumor-on-a-chip構築により免疫拒絶反応を起こさず、T細胞の抗腫瘍効果・免疫抑制効果が再現可能か? ② 抗原特異的な受容体を搭載したT細胞と、搭載していないT細胞の比較において標的細胞に対する反応の違いがデバイスにより評価可能か? ③ 複数の患者由来オルガノイドを用いて評価を行い、腫瘍ごとの効果の違いが評価可能か? ④ 免疫チェックポイント阻害剤の有無におけるT細胞の抗腫瘍効果の評価が可能であるか? 今年度は昨年度に引き続き③の段階で進捗を見せ、複数の患者由来のオルガノイドに血管網を接続したCancer-on-a-chip の作製に成功した。ここまでの結果を論文として報告する予定で進めており、最終年度には掲載を目指すとともに、並行して④の問にアプローチする。
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今後の研究の推進方策 |
本年度で患者由来のオルガノイドの実装と、免疫原性の低いiPS細胞由来血管内皮を使った血管網のオルガノイドへの接続に成功したことにより、プロジェクトとして「がん免疫療法のT細胞機能評価を可能とする3次元がんチップの開発」に関してはコンセプトを提示するに十分なデータと結果を得られたと考えている。 最終年度には、論文の投稿、掲載を完了させるとともに、免疫チェックポイント阻害剤の有無におけるT細胞の抗腫瘍効果の検討などを通して、「実証」の部分にデータを加えていこうと考えている。
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