研究課題/領域番号 |
22K12783
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
永竿 智久 香川大学, 医学部, 教授 (20245541)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 漏斗胸 / バイオメカニクス / 有限要素法 / 胸壁 / 胸郭 |
研究開始時の研究の概要 |
漏斗胸に対する手術法には、内視鏡を用いる方法(内視鏡法)と、皮膚を切開して肋骨を組み替える方法(組み替え法)がある。患者に対する身体的負担は、前者が圧倒的に小さい。小児に対しては内視鏡法を行うことは容易であるが、成人の患者においては胸壁が加齢により硬化しているため、組み替え法を用いざるを得ないことが多い。しかし成人に対しても、一部の肋骨をあらかじめ切っておけば、胸郭の柔軟性が増すので、内視鏡で手術を行うことが可能になる。本研究においては、どの肋骨を「ピンポイント」で切っておけば良いのかを、術前に診断するシステムを開発する。
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研究実績の概要 |
成人の胸郭は小児の胸郭より硬く、柔軟性に乏しい。したがって、成人の胸郭変形症の患者に対して手術を行う場合、一部の肋骨をあらかじめ切り、胸郭を柔軟にしておく必要がある。どの肋骨を「ピンポイント」で切れおけば良いのかを、術前に診断するシステムを開発することを目的として本研究を行っている。具体的には漏斗胸患者の胸郭を3次元力学モデルに変換し、そのモデルにおける手術シミュレーションを施行する。手術に伴って胸郭の形態がどのように変化するかを観察し、有効な骨切り方法を見出す。2022年度には、非対称性の胸郭変形症に対して手術を行う場合のノウハウについて究明した。胸郭の右側が左側より小さい場合には、対称性を得るために、右側の肋骨を切離する場合と、胸骨を切離する場合がある。いずれの方法が良い結果を得られるかを究明するために、10人の胸郭につき ①右胸壁の第2および第3肋骨を切離する方法 ②胸骨を切離する方法 ③右胸壁の第2および第3肋骨、および胸骨を切離 する手術方法の結果を、まったく切離を行わない場合の結果と比較したところ、①右胸壁の第2および第3肋骨を切離する方法 ならびに③右胸壁の第2および第3肋骨、および胸骨を切離する方法 にて良好な結果が得られることが判明した。すなわち、非対称な胸郭を有する漏斗胸患者に対して手術を行う場合には、胸骨の切離のみでは不十分で、肋骨の切離が必要であることが判明した。この研究成果は、査読付き英文雑誌(ePlasty)に掲載される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は2022年より2024年の3年間にわたり行う予定であり、2022年は研究の初年年にあたる。当初の計画では初年度はCTデータから胸郭のモデリングを行う技術を開発するところまでを進捗目標にしていた。この点についてはクリアした上、作成したモデルを用いて一定の成果を得ることができた。非対称症例において、どの部分を骨切りするかは臨床的に非常に大きな問題であり、学会で論争が絶えない事項であった。これに対して力学的な立場から解答しえたことは、大きな成果と考えている。また、本研究の成果を応用することにより、実際に良好な結果を得ている。これについても、以下のように論文を発表している。Nagasao T, et, al., Separation of the seventh costal-sternal junction-A new technique to improve outcomes for the Nuss procedure for pectus excavatum J Plast Reconstr Aesthet Surg. 2023 Jan;76:4-9. このように、2022年度には単純にモデル作成のノウハウを開発したのみならず、英文論文の発表も達成したので、予測を上回る進捗を得たと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
先天性胸郭変形症における変形パターンは、左右の胸壁の位置が異なるタイプ以外に、①胸骨の短いタイプ ②胸骨の長いタイプ ③胸骨自体に大きな変形が見られるタイプ も存在する。これらのタイプにおいても、効率的な骨切りの位置を解明する。 さらに視点を拡大し、脊椎後湾症(いわゆる「猫背」)と漏斗胸手術との関係にも踏み込んでゆく。われわれは本研究において、数多くの漏斗胸患者のフォローを行う中で、脊椎後弯症の患者において、後弯が術後に改善する現象に気が付いた。なぜこの現象が起こるのかを、力学シミュレーションを用いて解明してゆく予定である。
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