研究課題/領域番号 |
22K12784
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
張 秀英 九州大学, 医学研究院, 学術研究員 (50914173)
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研究分担者 |
永田 公二 九州大学, 大学病院, 講師 (20419568)
田尻 達郎 九州大学, 医学研究院, 教授 (80304806)
河野 淳 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (90758418)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 組織工学 / バイオ3Dプリンター / 細胞パッチ / 先天性横隔膜ヘルニア / 臍帯由来間葉系幹細胞(UC-MSC) / 横隔膜再生 / 人工臓器 / 羊水由来幹細胞 / 臍帯由来間葉系幹細胞 / 移植・再生医療 / 新規先天性横隔膜ヘルニア根治術の開発 |
研究開始時の研究の概要 |
先天性横隔膜ヘルニア(CDH)は、先天的な横隔膜筋 肉の欠損に伴う腹部臓器の胸腔内への嵌入により肺低形成が出現する死亡率25%と予後不良 な疾患である。本疾患の問題点として、欠損孔が大きい症例に対しては人工布を用いて欠損孔閉鎖を行うが、人工布は収縮力がないことや体の成長に応じて大きくならないため、術後再発、胸郭変形などがある。これを解決するために、申請者らはヒトの皮膚線維芽細胞と血管内皮細胞を混合して細胞パッチをバイオ3Dプリンターで作製し、世界で初めて細胞だけで作製したパッチで横隔膜の修復に成功した。そこで本研究では臨床応用に向けてのパッチの大型化と中動物での有効性を実証する研究を行う。
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研究実績の概要 |
本研究では、先天性横隔膜ヘルニア患者への臨床応用を目指して、母体の皮膚から線 維芽細胞を、臍帯、羊水から内皮細胞、間葉系幹細胞、神経幹細胞などの細胞を抽出して細 胞パッチを作成し、最終的には、児の自己横隔膜を再生する新規治療法の開発を目的としている。 1:基盤技術の開発細胞:パ ッチサイズを大きくするための基盤技術の開発を行った。剣山状の支柱を大型化する方法①と細胞のみで構築された 構造体同士を連接させる方法②がある。本年度では①、②の最適な方法を確立した。すな わち①では最適な剣山の長さや形状を、剣山状の支柱の大型化を改良した。②では最適な連結方法や連結に要する期間を検証した。両者を組み合わせることで 5cmx5cm の細胞パッチを作 することの目標を達成した。 2:細胞ソースの検討と適切な3次元構造体の検討:令和5年度は、基盤技術を開発する一方、in vitroにおいて臍帯由来MSCから神経分化誘導能の検討を行った。臍帯由来MSCを分化誘導培地に2週間培養により神経様細胞を得た。これら神経様細胞は、免染蛍光染色にてHuC/D、MAP2のNeuron陽性を認めた。さらに先行する幹細胞研究等参考にし、筋芽細胞の効率的分化、大量培養、目的細胞の純化等の条件検討とデータの蓄積を行った。 3:適切な3次元構造体の検討:臍帯由来MSCより立体的構造体を作成するためのスフェロイド作成の最適化を行った。具体 的には、MSCの細胞数を変えてスフェロイドを作成。スフェロイド形成期間、スフェロイドサイズ、および低 酸素マーカー(HIF1-α)の染色、TUNNEL染色による細胞生存率を解析し、最適なスフェロイド作成条件を解析した。さらにその結果をもとに、バイオ3Dプリンターで作製した構造体に科学的刺激を与え、5週間の循環培養による適切な強度を得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、令和5年度は臍帯由来間葉系幹細胞を用いた立体組織構造体を作製し、基盤技術の開発細胞を行った。剣山状の支柱を大型化する方法①と細胞のみで構築された 構造体同士を連接させる方法②がある。本年度では①、②の最適な方法を確立した。すな わち①では最適な剣山の長さや形状を、剣山状の支柱の大型化を改良した。②では最適な連結方法や連結に要する期間を検証した。さらに、細胞ソースの検討と適切な3次元構造体の検討により5cmx5cm の細胞パッチを作製することの目標を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
1:ウサギを用いた横隔膜再生細胞パッチ移植: 妊娠ウサギより飼育し、出産後新生ウサギより皮膚線維芽細胞を臍帯より血管内皮細胞を分離・採取し、培養する。神経細胞を用いる場合には、間葉系幹細胞から神経細胞を分化誘導して用いる。これらの細胞の入手が困難な場合には、ヒトの細胞を用いて実験を行い、術後は免疫抑制剤の投与を行う。ヒトの新生児と同等の約 2~3kg に成長したウサギを移植実験に用いる。CDH の 80%以上は左側であるため、欠損孔を作製する横隔膜は左側とする。全身麻酔、人工呼吸管理下に開腹し、外科的切除によって横隔膜欠損孔を作製する。欠損孔をバイオ 3D プリンターで作製した細胞パッチを用いて修復する。対象群は臨床で用いられているGORE-TEX シートで修復した群とする。臨床評価項目:生存率、SpO2、体重。横隔膜の形態分析、再発や弛緩の有無、成長に伴う組織の大きさ(面積の計測)の変化など、横隔膜修復部の強度分析を行う。組織学的検討:横隔膜修復部の横紋筋・血管・神経の再生を組織学的に解析する。横隔膜構築における神経の寄与の分析:再生横隔膜の神経伝達、ティッシュオーガンバスシステムによる電気生理学 (EN)解析、筋電図解析する。癒着など副反応についても評価する。 2: 細胞パッチにおける横隔膜筋肉再生メカニズムの解明: a) 羊水由来の間葉系幹細胞から筋芽細胞への分化誘導: 羊水由来の間葉系幹細胞が PDGFRα、VEGFR2 の発現を調整される事で筋細胞へ分化するという仮説をたてて、間葉系幹細胞の誘導実験を行う。b) 羊水由来の間葉系幹細胞と筋衛星細胞の共培養 再生メカニズムを解明する事で、細胞の分化誘導を促す事が出来れば、実際に母体から採取された再生医療製品が、児に使用されるまでの時間が短縮されるものと思われる。
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