研究課題/領域番号 |
22K12789
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
黒田 輝 東海大学, 情報理工学部, 教授 (70205243)
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研究分担者 |
厚見 秀樹 東海大学, 医学部, 准教授 (30307269)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | Neurofluid / MRI / QSI / Bloch Torrey / CSF / Glymphatic System |
研究開始時の研究の概要 |
脳内の神経老廃物の浄化過程において、CSFは神経細胞・グリア細胞周囲の細胞外液と交換しneurofluidを成すが、その脳実質内での動態や駆動源は解明されていない。本研究はこの浄化機構を解明するために、MRIのQ空間画像化法 (QSI)を応用し、脳実質内でのneurofluidの微速灌流の可視化とその駆動源解明のための脳実質弾性の計測を目指す。速度感受性を変化させた拡散強調画像から変位確率分布を求め、その偏りに基づいて速度を定量して画像化する。組織弾性の定量には実時間・位相コントラスト法に基づく心拍動性・呼吸性のCSF速度波形の遅れ時間と相関の崩れを測定し、これらと組織弾性の相関を用いる。
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研究実績の概要 |
本年度は、昨年度までに得たファントムならびにマウス実験の結果に基づいて、QSI(Q-Space Imaging)法による速度計算の理論解析、得られた速度分布画像の再現性・妥当性の検討を行うとともに、結果の解釈を行なった.まず理論解析として、これまではQ空間の逆フーリエ変換で得られる変位確率分布のピーク位置からの速度導出ならびに,Q空間における位相変調のモデル化により,あるq値とq=0における信号の位相差を2πqで除することで速度が近似できることを示した.2023年度はQ空間の信号をエルミート多項式で展開し,その展開係数を用いることで,逆フーリエ変換を介さずに変位確率分布を求めるGMAP(Generalized Mean Apparent Propagator)法を検討した.これを実験の結果に適用したところ,Q値の間隔で決まる速度帯域の大きさによって,フーリエ変換法とGMAP法に得失があることがわかった.次にQSI法をマウス脳実質に対して空間6軸に適用して求めた速度ベクトルマップにおける,拡散,心拍動による組織脈動,ならびに血流の影響を評価するためのコンピュータシミュレーションを行なった.一つのボクセル内に1000個のisochromatを置き,それらが10μm/sの微小並進速度を有するとした.拡散の影響はBloch-Torryの方法に従って信号減衰として与え,そこに1mm/s程度の振幅の組織脈動ならびに2mm/s程度の血液脈流を加えてた系におけるQ空間を求めて,そこから得られる微小並進速度を評価した.その結果,拡散,脈動,血流があると最大5%程度の誤差が生じるものの,ボクセル内における微小並進速度が推定できることが示された.このことは既に得られているマウス実験の結果が,脳実質内のneurofluidの動きであることを示唆するものであった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ファントムならびにマウスによる実験に基づいて,Magn Reson Medに論文投稿した.査読意見に対して回答すべく,追加の検討を行ってきた.それが上述の理論解析ならびにコンピュータシミュレーションである.再投稿においては,ファントム実験と理論解析の結果,ならびにマウス実験とシミュレーションの結果を2報に分ける予定で投稿準備を進めている.なお2023年度半ばに、9.4TのMRI装置のプローブならびに分光装置ハードウエアの一部が故障し,実験ができない期間が生じた.これに伴って論文投稿後の研究作業が理論計算ならびに数値シミュレーション中心となった.研究全体としては概ね順調に進展しているが,数値シミュレーションなどに時間を割いた分,実験量が少なくなった.2024年度はこのことを考慮して,実験に力を注ぐ予定である.
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今後の研究の推進方策 |
【今後の推進方針】 2023年度まで得た理論解析・実験ならびにシミュレーションの結果から,QSIを用いた脳実質内のneurofluidの微小運動計測の可能性が示された.この結果をさらに検証するため,マウス実験としては,9.4T MRI装置を用いて嗅覚神経繊維周囲の脳実質に着目して,実験を重ねる予定である.さらに上述の近似式を用いた撮像の高速化によるヒト健常ボランティアデータの収集を行う.このため現在,2024年度の学内倫理委員会への申請を行なっている.3T MRI臨床機を用いた実験ではQSI法に加えて,速度エンコード(Velocity Encoding, VENC)値を極小に設定した実時間位相コントラスト法による実験を行い,心拍動性,呼吸性,ならびに微速循環の運動成分分離を行い,各速度域におけるneurofluidの伝搬特性ならびに脳実質弾性の可視化を行う.
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