研究課題/領域番号 |
22K12828
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90120:生体材料学関連
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
松本 昭博 大阪大谷大学, 薬学部, 准教授 (80824911)
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研究分担者 |
渡辺 知恵 城西大学, 薬学部, 准教授 (30737747)
村上 正裕 大阪大谷大学, 薬学部, 教授 (50174280)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ヤヌス粒子 / 多孔質半球 / 粘膜付着 / 一方向放出 / ヤヌス微粒子 / 多孔性 / 核酸 / 吸収モデル |
研究開始時の研究の概要 |
申請者らは、バイオ医薬品の経口薬化のプラットフォームとなる技術及び製剤の構築を目指しており、多孔性半球もと非孔性半球が一体化した新規ヤヌス微粒子を調製し、これをキャリアにしてsiRNAのラット経口投与による肝臓特異的デリバリーに成功している。この製剤は、消化管粘膜に付着し、粘膜上皮方向のみに薬物と吸収促進剤を高濃度に放出し、効率よい薬物消化管吸収の実現するように設計されている。本研究では、ヤヌス微粒子に関する臨床研究に向けた改良・最適化検討と同時に、消化管内と粘膜中の動態を数理モデル解析し、マイクロオーダーの局所における薬物送達過程の見える化を試みる。
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研究実績の概要 |
1.放出特性の異なる多機能性微粒子の調製:多機能性微粒子について、多機能化と製造法の改良を行った。半球のみ多孔質のヤヌス微粒子について、薬物・添加物等の最大仕込み量を増やすため、多孔性半球のさらなる多孔質化による細孔空間容積の最大化を試みた。その結果、o/w型エマルション形成後溶媒除去工程における初期の溶媒留去スピードを遅くし、その期間を延長することにより、多孔性半球の元となる相分離滴の成長と粒子表面への移動を促すことができることが分かった。その結果、より細孔空間容積が増え、その効果は粒子径の大きな分画(100μm)で顕著であった。多孔質半球に蛍光物質と粘膜付着性高分子を封入したところ、粘膜付着性高分子により半球を支点とし、ガラス板に付着し、そこから蛍光物質が徐々に放出される様子を動画でとらえることができた。その放出挙動は、薬物と共含浸する物質の仕込み方法によりコントロールできることが分かった。このことにより、一方向の放出性、付着性、薬物徐放性といった多機能性を達成することができた。 2.微小領域での吸収における薬物の収支の整理/シミュレーション理論の構築:その薬物放出性をシミュレーションする準備を進めており、現在はコンピューター負荷を考え、100μmの多孔性ヤヌス粒子にターゲットを絞り、そこからの薬物放出のシミュレーションを行なっており、妥当性を取得した動画を用いて検証を行っている。 3.消化管内・粘膜上での薬物・吸収促進剤の放出メカニズム解明/in vitro細胞モデルの構築:現在、Caco-2とHT29MTX細胞の積層モデルにより粘膜層を有したIn vitro細胞膜モデルの構築がほぼ完成した。 4.消化管内・粘膜上での粒子の挙動の解明/小動物を用いての実験:蛍光ラベル化siRNAと粘膜付着性高分子を共含浸した多孔性ヤヌス粒子をマウスに投与した。現在解析中。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していたすべての項目について、新たな知見が得られた。ただし、消化管内微粒子の挙動について、動物実験は行ったものの解析が進んでいない。一方で、2024年度に予定していた「シミュレーション理論の構築」について、新たに大阪公立大学・岡山理科大学との共同研究を立ち上げ、前倒しで着手していて、その面では計画以上に進んでいる。この部分については、「今後の研究の推進方策」で述べている通り、新たな展開を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、予定通り、in vitro細胞膜モデルと小動物において多孔性ヤヌス粒子の挙動や薬物吸収に関するデータを取得する。このデータは以下の「シミュレーション理論の構築」の基礎データとして活用する。以下には「シミュレーション理論の構築」においての新たな展開(概略)を記す。 シミュレーション理論の構築:バイオ医薬品の経口薬化を可能とするその経腸体内送達技術の開発が進む中、高分子ないし中分子医薬品の製剤からの吸収動態を予測するシステムの開発は、ペプチド医薬及び核酸医薬など次世代の分子標的医薬品の経口薬開発における潜在ニーズとみなされる。ここで、腸管内での拡散・分布が迅速な低分子量医薬品とは異なり、バイオ医薬品の経腸管送達システムからの体内への移行動態の予測精度を向上するためには、従来の製剤からの薬物放出過程に加えて、腸管腔内、とくに吸収粘膜近傍において製剤から放出された後の薬物分子の拡散過程を含めたシミュレーションコードの開発が重要な鍵となる。バイオ医薬品の経腸送達システムからの吸収動態予測を可能とするシミュレーションソフトの開発を目標として、まずその基盤となる腸管璧近傍における薬剤の分布動態を予測するツールの開発を目指す。
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