研究課題/領域番号 |
22K12831
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90120:生体材料学関連
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
後藤 浩一 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (30279377)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | メソポーラスシリカナノ粒子 / がんワクチン / 液性免疫 / 抗体 / 樹状細胞 / サイトカイン / 抗原提示細胞 / 獲得免疫 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、メソポーラスシリカナノ粒子(MSN)を用いたがんワクチンの免疫誘導について細胞・動物レベルで検討する。抗原提示機能をもつマウス樹状細胞の培養系にMSNを添加し、in vitroで細胞応答性を観測する。また、MSNのワクチンサンプルをマウスに接種し、移植がんに対する免疫誘導効果と安全性をin vivoで検討する。さらに、ワクチン接種マウスの生体サンプルを分析し、MSNワクチンの免疫誘導機能を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では、ナノサイズの多孔質シリカ粒子(メソポーラスシリカナノ粒子Mesoporous silica nanoparticles(MSN))を用いた新しいがんワクチンの免疫誘導機能について検討することを目的としている。本年度は、マウスのCD4+ T細胞を刺激してヘルパーT細胞を誘導するニワトリ卵白アルブミン(OVA)の抗原ペプチド、活性化したT細胞の免疫抑制にかかわるprogrammed cell death-1(PD-1)膜タンパクとそのリガンドタンパクprogrammed cell death-ligand 1(PD-L1)の抗原ペプチドを使用した。また、抗原提示細胞である樹状細胞を刺激するToll-like receptor-9(TLR-9)のリガンドとして作用するCpGオリゴヌクレオチド(ODN1826)とTLR-4のリガンドとして作用するリピドA(LA)も使用し、これらワクチン成分を減圧濃縮によりMSNに封入してワクチンサンプルを調製した。得られたワクチンサンプルをC57BL/6マウスに皮下投与(1週間間隔で3回)後、腹大静脈から採血し、血清中の抗体(IgG)量についてELISAにより分析した。抗PD-1抗体については、コントロール群(ワクチン非投与群)と比較し、ワクチン投与群の血清において増大する傾向が観測され、とくに、OVA抗原ペプチド、PD-1抗原ペプチドおよびLAを使用したMSNワクチンにおいて最も高い値が得られた。一方、抗PD-L1抗体については、マウス由来とヒト由来のPD-L1抗原ペプチドを使用したところ、コントロール群と比較し、ヒト由来のPD-L1抗原ペプチドを使用したMSNワクチンで抗体量が増大する傾向が観測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の実験において、がん抗原のモデルとしてOVAを用い、 OVA抗原ペプチドを封入したMSNワクチンの投与マウスの血中に抗原特異的なIgG抗体の増大が観測され、MSNワクチンにより獲得免疫における液性免疫が誘導されることが示唆された。本年度は、さらに、免疫チェックポイント阻害剤として注目されているPD-1とPD-L1の抗原ペプチドを使用し、液性免疫による抗PD-1抗体と抗PD-L1抗体の産生誘導についてマウスを用いて検討した。今回行った実験条件では、OVA抗原ペプチド、PD-1抗原ペプチドおよびLAをワクチン成分として使用したMSNワクチンにおいて血清中の抗PD-1抗体量の高い値が得られた。同じワクチン成分のみを投与したマウスでは、血清中の抗体量は低く、MSNのワクチンキャリアーとしての効果が示された。また、抗PD-L1抗体については、有意差はなかったものの、ヒト由来PD-L1抗原ペプチドを使用したMSNワクチンで抗体量が増大する傾向が観測された。今回の実験から、OVA以外の抗原ペプチドでもMSNワクチンとして接種することにより液性免疫が誘導され、マウスの体内で抗体を産生できることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
MSNワクチンが生体において獲得免疫(細胞性免疫と液性免疫)を誘導し、がんの増殖を抑制できるかマウスを用いて検討する。本年度行ったPD-L1の液性免疫誘導については、実験条件を検討し、抗PD-L1抗体の産生量について再度実験を行う。また、細胞性免疫(キラーT細胞)を誘導するMSNワクチンと液性免疫(抗体)を誘導するMSNワクチンを調製し、これらを組み合わせた2種併用のワクチン接種によるがん抑制効果について、マウスにがん細胞を移植してin vivoで検討する。ワクチンデザインとして、細胞性免疫を誘導するMSNワクチンにはCD8+ T細胞とCD4+ T細胞の抗原ペプチドおよびオリゴヌクレオチド、液性免疫を誘導するMSNワクチンにはB細胞とCD4+ T細胞の抗原ペプチドおよびリピドAをそれぞれ成分としてMSNに封入し、ワクチンサンプルを調製する。これら2種のMSNワクチンをマウスの皮下に連続して接種後、培養がん細胞を移植する。がん細胞移植後のマウスについて、がん細胞の増殖や生存日数を観測し、2種併用のMSNワクチンにより誘導されるがん抑制の免疫効果について検討する。
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