研究課題/領域番号 |
22K12837
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90130:医用システム関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
中口 俊哉 千葉大学, フロンティア医工学センター, 教授 (20361412)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | カメラ付きトロッカー / 慣性センサ / 術具位置推定 / 画像支援手術 / 腹腔鏡下手術 / トロッカー / マルチセンサ |
研究開始時の研究の概要 |
内視鏡手術における死角の存在は安全で確実な手術を行う上で解決すべき課題の一つである.本研究では術中の腹壁に固定して用いるトロッカーにカメラ,距離センサ,慣性センサを組み込んだマルチセンサトロッカーを提案する.カメラ画像とセンサ情報を統合し,鉗子先端の三次元的な動きと周辺組織までの距離や表面凹凸などの腹腔内情報を取得する手法を提案する.これらの情報を術者に視覚的・聴覚的に提示し,意図しない誤接触など危険行為を未然に防ぐ警告を発するなど,手術の誘導支援・安全性向上・術者の技能評価などを実現する.
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研究実績の概要 |
本研究では,カメラ付きトロカールを用いた誤接触発生リスクを軽減する手法の開発を目的とする.目的達成のために,誤接触発生リスクを検知し,術者に対して警告を行う,術具誤接触警告システムの提案を行い,腹腔内模擬環境下において開発したシステムの評価実験を実施した.また,誤接触発生リスク低減のために,術者への体腔内3次元構造提示を検討し,慣性センサを用いた術具移動量算出について取り組んだ. 提案システムでは,鉗子が内視鏡の視野外に位置し,かつ近接組織との距離が安全とされる距離未満の場合を危険時と定義し,システムが危険時であると判断した場合に術者に対して警告を発する.システムでは,振動モータと距離センサを搭載したカメラ付きトロカールを使用した. 鉗子位置の判別には,物体検出モデルYOLOv5を用いた.検出時には,物体検出時のBounding boxの重心座標を利用したトラッキングにより,鉗子がどのトロカールに挿入されているかの対応付けも実施した. 本実験では,システムによる警告判定の精度を評価した.正解値として光学式トラッキングシステムPolaris Spectraを利用して,実験環境と手術器具先端の座標と姿勢を取得した.その後,取得した情報から鉗子の視野内外判定,鉗子先端部と組織間の距離,警告判定を算出し,システムの判定と比較した.実験の結果,視野内外判定において正解率の平均が8割以上であった.また,鉗子先端部と組織間の距離のMAE(平均絶対誤差)は15mm程度となったが,警告判定の正解率としては,85%を達成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度に計画していた(1)腹腔鏡映像からの術具先端の自動検出,(2)腹腔鏡の状態検出,(3) 術具先端の透視投影変換行列の算出,(4) 算出した透視投影変換行列の妥当性検証と術具の一致判定,について完了することができた.腹腔鏡下手術では,様々に環境が変化するため,術具先端の検出には頑強性が求められる.多くの腹腔鏡下手術映像を解析し,術具先端検出アルゴリズムを改善した.検出モデルにはYOLOv5を用い,独自のデータセットを用意して学習させた.鉗子検出器の学習には,背景画像と鉗子画像を別々に準備し,様々な背景に,鉗子を様々な位置・方向で重ね合わせることによって,環境変化を再現した.実験の結果,再現率98%,適合率90%の高い性能を得た.術具先端の透視投影変換行列の算出に関しては,鉗子シャフトに目盛りを振り実座標系における鉗子先端の3次元座標を取得,画像上の座標との透視変換表列を算出した.評価においては,光学式3次元位置計測センサ Polaris Spectra を用いて参照(正解)値を取得した.左右往復運動時,視野内外判定の正解率は86.08%,鉗子先端部と近接組織間の距離の誤差は平均10.41mm,警告判定の正解率は 97.76%となった.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2024年度は,当初の計画通り「システムの実装」と「有効性評価」を進める.ここまでの研究成果を総合して,獲得した情報を術者にフィードバックするシステムを実装する.術具が腹腔鏡の視野内・外にあることを通知し,術具先端と近傍組織との距離と近傍組織の形状を提示する.術具先端と組織が接近した場合に警告を発する. 本研究で提案した各計測・解析の要素技術と,それらを総合したシステムの性能についてドライボックス環境で評価実験を実施する.ドライボックス内部に設置した複数の目標に向けて,鉗子をボックス外からアプローチし,目標位置に到達するまでの軌跡,時間,および周辺までの接近距離を計測する.複数の被験者に協力を依頼し,提案システムを使用した場合と,使用しない場合を比較することで,提案システムの有効性を評価する.特に鉗子先端が誤接触事故を発生しうるリスク確率を数値的に算出することを検討する.また,腹腔鏡下手術の専門医(指導医)に協力を依頼し,提案システムの効果を多面的に検証する.
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