研究課題/領域番号 |
22K12840
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90130:医用システム関連
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研究機関 | 大阪成蹊大学 (2023) 京都大学 (2022) |
研究代表者 |
山本 詩子 大阪成蹊大学, データサイエンス学部, 准教授 (70707405)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 変形推定 / コンピュータ支援手術 / ブラックボックス最適化 / カーネル法 / ランドマーク / 肺 / 気胸変形 / スパース回帰 / ベイズ的最適化 |
研究開始時の研究の概要 |
コンピュータ支援手術では、直接目視できない領域を含めて注意すべき関心領域や切除対象領域についての情報を医師に提供することが求められている。本研究の目的は、手術中の限られた視野内で肺の変形を観測するランドマークとなる位置を最適化し、変形を解析しやすいコスト関数で変形をモデリングすることにより、ヒト肺の変形推定を行い手術の支援をするアルゴリズムの創出とシステムの開発を行うことである。本研究計画では、限られた視野内で臓器を観測するランドマーク位置の最適化、計算コストが低く解析に適したコスト関数で臓器の変形をモデリング、ヒト肺の変形推定に適用し手術支援システムの開発に取り組む。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、対象が複雑な入出力関係のモデルに対する最適化手法の一つであるブラックボックス最適化を、臓器の変形推定に応用することを目指している。肺の手術において、開胸手術に比べてより低侵襲な胸腔鏡手術が主流となってきたが、手術中の視野が狭く臓器の状態を正確に捉えることが難しいことから、手術計画通りに手術を進めることがしばしば難しい。そこで医師による施術をコンピュータが支援するシステムの導入が進められている。コンピュータ支援手術では、直接目視できない領域を含めて注意すべき関心領域や切除対象領域についての情報を医師に提供することが求められている。本研究課題は、手術中の限られた視野内で肺の変形を観測するランドマークとなる位置を最適化し、変形を解析しやすいコスト関数を構築して変形をモデリングすることにより、ヒト肺の変形推定を行い手術の支援をするアルゴリズムの創出とシステムの開発を行うことを目的としている。 研究期間2年目の本年度は、二次形式のコスト関数で変形をモデリングすることを目指して取り組んだ。任意の組合せ最適化問題を二次形式のコスト関数で記述することができること、またパラメータの数が膨大にならないバランスを考慮して組合せ構造のベイズ的最適化を利用したブラックボックス最適化が提案された。その二次形式のコスト関数から感度分析やスパース回帰を行うことで、変形に寄与するランドマークを特定するなどの解析が可能となる。二次形式のコスト関数からスパース回帰を行うプログラムを、本年度に論文を発表した研究において作成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺は術中に脱気すると非線形に大きく萎む変形をするため、術前に肺が膨らんだ状態で撮像したCT画像で特定した切除対象領域は、肺が脱気状態となった術中には、肺全体の変形に従って移動する。コンピュータ支援手術で術野の情報を医師に提供するためには、術中に臓器がどのように変形し、術前に計画した切除対象領域が術中にどのように移動するかを正確に同定することが重要である。臓器は硬さや微細構造が、部位や人ごとに異なるため、力学特性をパラメータとした力学モデルを用いて変形を計算するには、力学特性の計測が必要となり手術中には不可能である。また、特に肺の変形は、術前から気胸状態の術中への収縮で大きな体積変化を伴うため、有限要素法などで体積変化が起こらないと仮定した変形計算を行うことは難しい。従って、限られた視野内の臓器の情報から、3次元的な臓器全体の変形を予測する技術の開発は重要な課題である。 研究期間2年目の本年度は、計算コストが低く解析に適した二次形式のコスト関数で臓器の変形をモデリングすることを目指して取り組んだ。統計的に変形を精度良く表現できるコスト関数を構築し、解析的に臓器全体の変形を計算できるようにモデリングすることで、蓄積したデータの検証のみならず、臓器の変形というものを理解することへと繋がることが期待できる。研究期間1年目に構築したブラックボックス最適化のプログラムを利用し、二次形式のコスト関数で変形をモデリングすることを目指した。ランドマークの位置と変形との関係はもともとは未知の関数であるが、どんな関数でもテイラー展開をすれば多項式で近似が可能である。二次の項までの展開で近似した二次形式のコスト関数で表すと、微分などの計算を行うことによって変形に寄与するランドマークを特定するなどの解析が可能となる。 以上のことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では、ブラックボックス最適化を用いて、手術中の限られた視野内で肺の変形を観測するランドマークとなる位置を最適化し、変形を解析しやすいコスト関数で変形をモデリングすることにより、ヒト肺の変形推定を行い手術の支援をするアルゴリズムの創出とシステムの開発を行うことを目的としている。 研究期間3年目の次年度は、研究期間1年目に構築したブラックボックス最適化のプログラムおよび、研究期間2年目に構築した二次形式のコスト関数を用いてスパース回帰を行うプログラムを利用し、これまでに用いてきた犬肺のモデリングした変形を、ヒト肺の変形を推定する手法の開発へと繋げることを目指す。これまでに用いてきた犬肺のデータは、生きたビーグル犬を開胸し、口に挿入したチューブからの空気圧を調節することで肺が膨らんだ状態と萎んだ状態で3D-CT撮像をして得た。しかし、ヒト肺を対象とする場合は、そのような実験を行うわけにはいかない。肺が膨らんだ状態の生体内画像は、術前の検査で取得する標準的な3D-CT画像を用いることができるが、肺が萎んだ手術中の生体内画像としては、標準的な3D-CTではなくコーンビームCTのような術中CTの画像しか得られない。コーンビームCTは、標準的な3D-CTのように肺全体が撮像範囲に収まるすなわち肺の外郭が全て含まれた撮像はできず、部分的にしか臓器を撮像できない。そこで、術中コーンビームCTのデータを肺全体にレジストレーションする手法を活用して、肺全体の変形を推定する。その際、術中のデータを多くの被験者から取得することは医師と患者への負担が増加して困難であるという問題がある。そこで足りないデータ数を補うために、学習に基づいて乱数から画像を生成する機械学習の一つである敵対的生成ネットワーク(GAN)等の利用を検討する。
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