研究課題/領域番号 |
22K12846
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90130:医用システム関連
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
引間 知広 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (30332852)
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研究分担者 |
伊藤 高廣 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (10367401)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 烏口型マイクロニードル / バイオ医薬品 / 電場 / 超音波 / 生分解性ポリマー / 皮膚透過促進 / マイクロニードル |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題は、独自に開発した烏口型マイクロニードル(MN)と、物理的皮膚透過促進法を組み合わせたバイオ医薬品の新しい経皮吸収技術の研究を行い、携帯型治療システムを開発することを目的とする。達成目標として (i)烏口型MNの形状及び材質の最適化、(ii)物理的透過促進法による高分子化合物の皮膚透過促進、(iii)最適化した物理的透過促進技術を組み込んだ携帯型治療システムの作成、を挙げる。これらの達成目標を解決して、MNにより皮内に送達したバイオ医薬品の皮膚透過速度を、物理的透過促進法で任意に増減させることを可能とする経皮治療システムを開発する。
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研究実績の概要 |
本研究目標として、独自に開発した烏口型マイクロニードル(MN)と物理的透過促進法を併用することにより、バイオ医薬品である高分子医薬品の皮膚透過量の時間制御を挙げている。皮膚の優れた防御機能により、高分子医薬品はほとんど皮膚から吸収させることができないが、経皮吸収は多くの利点がある。皮膚表面にある角質層に微小孔を空けるMNや、物理的透過促進法を個別に皮膚へ適用すると、高分子医薬品の皮膚透過量を増加させることが可能であるが、皮膚透過量の時間制御は難しいことを明らかにした。そこでMNと物理的透過促進法の併用により高分子医薬品の皮膚透過量の時間制御が達成できると、独自性ならびに新規性の高い研究となる。本研究目標を達成するために本年度は、(i)烏口型MNアレイの再設計および作成、(ii)烏口型MNと電場との併用効果の確認、を行った。物理的透過促進法としての電場は、電流のオンオフ、電流密度や適用時間などにより小分子量薬物の皮膚透過量の制御が可能である。しかしこれまでの検討から、高分子医薬品に対しての透過促進効果は予想よりも小さいことが明らかになりつつある。そこで本研究目標を達成するために、新たに (iii)物理的透過促進法としての超音波の可能性検討、を追加した。 烏口型MNアレイに関する研究成果は、研究分担者である伊藤が2022年11月に開催されたThe 19th International Conference on Precision Engineeringにおいて口頭発表を行った。また引間は投稿論文を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで烏口型MNアレイのニードル数は100本、そして材料には生体適合性ポリマーであるポリカーボネートを使用していた。一般的にニードル本数を増やすと皮膚穿刺性が低下し、一方でニードル本数を減らすと穿刺性が向上すると予想できる。そこでニードル本数を140本、100本、そして52本としたMNを作成した。糖尿病ラット皮膚をMNで処理し、微細孔にインスリン溶液を塗布した。血糖値はニードル本数に影響を受けず、ほぼ等しい経時変化となった。また生分解性ポリマーであるポリ乳酸やポリグリコール酸を材料にしたMNを作成したが、MNの穿刺性に影響が出た。 高分子医薬品のモデル化合物としてフルオレセインイソチオシアナートデキストラン(FITC-D)を用いて、剥離皮膚におけるin vitro皮膚透過試験を行った。MNと電場の単独適用において分子量4,000のFITC-D4の皮膚透過量は、何も適用しないコントロールと同等であった。MN処理後に電場適用した併用条件では1.7倍まで増加した。分子量20,000のFITC-D20の皮膚透過量は、MNと電場を併用することでコントロールの4.4倍まで増加した。これらの結果からMNと電場の併用効果は認められたが、皮膚透過促進効果の時間制御は今後の課題となった。 超音波による薬物皮膚透過促進メカニズムは角質層における拡散性の増加である。このようなメカニズムを持つ超音波をMNと併用することで、高分子医薬品の皮膚透過量が増加するか検討した。インスリンを塗布した烏口型MNで糖尿病ラットの背部皮膚を処理し、その後に超音波を1分間適用した。試験開始から1時間と短い時間において、MNと超音波の併用時の血糖値はMN単独と比べて0.8倍まで下がった。したがってMNと超音波の併用効果が認められたが、本研究目標である皮膚透過量の時間制御は次年度での検討項目となった。
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今後の研究の推進方策 |
現在の烏口型MNはポリカーボネート製であり電気電導性を持たないため、MNと電場の同時適用ができない。皮膚をMN処理後に薬物を塗布し、その後に電場を適用すると言う操作を行っている。この操作の複雑さを解決するため、烏口型MNの形状を新規に作成する予定である。この新規形状MNを作成することにより、烏口型MNの穿刺性および薬物保持量の高さを生かすことが可能になり、本研究課題の目標を達成できると考えている。さらに電流の種類(直流と交流)、電流の向き、電流値などのパラメータと皮膚透過促進効果との関係を、FITC-Dやインスリンを用いて検討する。また超音波の併用に関しても検討を続け、より確実な高分子医薬品の皮膚透過促進を目指す。 MNの材料から大別すると、MNは本研究で活用している非分解性のMNと、皮膚内で分解する生分解性のMNに分けられる。生分解性MNは安全性の観点から非分解性MNに比べ多く研究され、化粧品分野では実用化されている。生分解性MNは、製造過程における制限のため含有できる薬物が限られ、また含有可能な薬物量が少ないなどの欠点がある。しかし本研究課題の目標を達成するには、様々な手段を検討する必要がある。そこで烏口型MNを生分解性ポリマーで作成し、生分解性MNと物理的透過促進法の併用可能性も検討する。
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