研究課題/領域番号 |
22K12851
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90130:医用システム関連
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研究機関 | 横浜薬科大学 |
研究代表者 |
弓田 長彦 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (40191481)
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研究分担者 |
桑原 弘行 横浜薬科大学, 薬学部, 准教授 (10598642)
矢野 健太郎 横浜薬科大学, 薬学部, 講師 (40644290)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 超音波 / ナノ微粒子 / アポトーシス / 一重項酸素 / ポルフィリン化合物 / 集束型超音波照射装置 / 電子スピン共鳴 |
研究開始時の研究の概要 |
本年度は、超音波単独、または機能性カーボンナノチューブとの併用による単離腫瘍細胞に対する殺細胞作用の増強を確認した。さらに、活性酸素種消去剤添加の超音波と機能性カーボンナノチューブ併用による殺細胞作用に対する影響を検討したところ、一重項酸素の消去剤であるヒスチジンの添加が、超音波と水酸化カーボンナノチューブ併用処置の殺細胞効果を著しく抑制することを認め、その殺細胞作用機序においける一重項酸素の関与を推定した。
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研究実績の概要 |
成人病の治療について,治療後の Quality of Life を重要視する必要性が増加している.従来、癌の治療は,いずれも治療効果と患者の Quality of Life とを両立するという観点において理想的と言えるものではない.ナノ粒子であるカーボンナノチューブは,薬物単独による毒性は,従来の抗癌剤に比べて無視できるほど小さく,また,超音波を集束した患部以外における副作用が実質的に無視できる治療の実現を期待することができる.そこで、本研究では、従来の治療法の技術的な限界を克服することを目的に,外部エネルギーである超音波と音響化学的に抗腫瘍活性化する機能性カーボンナノチューブを組み合わせた新たな腫瘍ターゲティングシステムの開発を行うことを目的とした.この研究では,超音波単独,またはポリエチレングリコール修飾カーボンナノチューブ(PEG-modified CNTs)との併用による単離腫瘍細胞に対する殺細胞作用の増強を確認した。さらに,一重項酸素の消去剤であるヒスチジンの添加が,超音波とPEG-modified CNTs併用処置の殺細胞効果を著しく抑制することを認め,その殺細胞作用機序においける一重項酸素の関与を推定した.次にcolon26固形腫瘍を移植した動物に,薬物25 mg/kgを投与し,超音波を照射した。単独は抗腫瘍効果を示さなかったのに対し超音波とPEG-modified CNTs併用処置が有意な増殖抑制を示した.このことによりPEG-modified CNTsが超音波により活性化し細胞毒性を発現していることが示された.抗また処置後の腫瘍にHE染色を行ったところ,腫瘍組織に細胞の壊死が観察されたこれらの結果から固形腫瘍においてもPEG-modified CNTsを超音波により活性化し抗腫瘍効果を発揮できることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、超音波単独、またはPEG-modified CNTsとの併用による単離腫瘍細胞に対する殺細胞作用をトリパンブルー排除法によって確認した。超音波と推定されるため、活性酸素種消去剤添加の超音波とPEG-modified CNTs併用による殺細胞作用に対する影響を検討した.OHラジカルの消去剤であるマンニトールとスパーオキサイドラジカルの消去剤であるSODは併用による殺細胞効果に対し有意な抑制作用を示さなかったのに対し,一重項酸素の消去剤であるヒスチジンの添加が,超音波とPEG-modified CNTs,またはPEG-modified CNTs併用処置の殺細胞効果を著しく抑制することを認めた。以上の所見より超音波とPEG-modified CNTs併用による殺細胞作用機序において一重項酸素の関与を確認した.
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今後の研究の推進方策 |
以上、報告したように本研究の達成度は、当初予定した検討項目において目標値をほぼ達成したものと考えられる。音響化学療法に適した薬物,すなわち,超音波照射によって活性化され,そのときに生ずる作用が悪性腫瘍の治療に有効な薬物としては,上に述べたカーボンナノチューブだけでなく,多くの種類の薬物が可能性を持っていると考えられる.今後は,超音波照射による化学的活性化のしくみを明らかにしながら,このような薬物の探索をさらに拡げ,音響化学療法の適用可能性を拡大していくことが必要となろう.
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