研究課題/領域番号 |
22K12870
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90130:医用システム関連
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
高橋 正信 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (20338312)
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研究分担者 |
中野 雅行 横浜市立大学, 医学研究科, 特任教授 (00092073)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 病理組織 / 光学顕微鏡 / 明視野 / 位相差 / 暗視野 / 細胞膜 / 核小体 / 核 / 画像解析 / 肝臓 |
研究開始時の研究の概要 |
癌などの診断支援を目的とする病理組織の画像解析では、病理医が診断に用いる薄切した標本の明視野画像がこれまで用いられてきた。しかし、画像解析において明視野画像が最適であるとは限らない。そこで、病理医が利用する光学顕微鏡で容易に利用できる暗視野、位相差を含め、画像解析に適した撮像法を明らかにする。 また、厚い標本を用いて3次元空間での解析を実現し、3次元的な特徴量を抽出する。 さらに、診断に役立つ新たな特徴量も探索する。 最終的には診断に有用な情報を提供する診断支援システムを実現することを目的とする。
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研究実績の概要 |
【目的】病理医が診断に用いる光学顕微鏡で利用できる撮像法のうち、病理組織の画像解析に適した撮像法を明らかにする。また、光学顕微鏡を用いて厚い標本の撮像と3次元解析を実現し、3次元的な特徴量を抽出する。さらに、細胞診で利用される特徴量を抽出するとともに、診断に役立つ新たな特徴量を探索し、診断支援システムを実現する。 【研究成果】R5年度は、引き続き肝組織の構成要素の抽出に有用な撮像法の組合せについて検討した。具体的には、明視野、暗視野、位相差のカラー画像の全ての組合せについて、深層学習ネットワークを用いた場合の構成要素の抽出精度を実験的に比較した。 まず、HE染色標本の細胞膜の抽出について実験的に検討した結果、F値を評価指標とした場合、3種類の撮像法全てを組み合わせた場合に最高の精度が得られた。また、細胞診で利用される核小体についても抽出に適した撮像法の組合せを検討した。IoUを指標として評価した結果、HE染色標本の場合は明視野が、無染色標本の場合は基本的に位相差を利用した場合に他より高い精度が得られることが分かった。核小体については、合成撮像法を用いる場合を想定し、合成画像の精度も評価したが、位相差のみを用いた場合が高精度であった。 特徴抽出に関しては、新たにVAEを利用する手法について検討した。アノテーションを行っていない核の画像を用いて学習したVAEを利用することで、教師無しで領域をセグメンテーションできる可能性が示された。さらに、潜在空間における癌部と非癌部の核の平均ベクトルの差異を利用することで、癌部と非癌部間で核の画像を相互変換できる可能性が示され、特徴抽出におけるVAEの有用性が示された。 さらに、診断支援システムを実現する基本機能として、深層学習により抽出した細胞核の特徴量分布を可視化する基本的な機能を実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
病理組織標本の構成要素の抽出に適した撮像法およびその組み合わせを探求した。HE染色標本の細胞核の抽出に関しては、明視野と位相差、および明視野と暗視野を組み合わせた場合に明視野とほぼ同等のF値が得られたが、明視野に対する改善は無かった。HE染色標本の核小体の抽出に関しても細胞核と同様に明視野以外の撮像法を組み合せることによるF値の改善はみられなかった。HE染色標本の細胞膜の抽出に関しては、3種類の撮像法の画像を全て組み合わせた場合に他より高い精度が得られ、撮像法の組み合わせが有効であった。また、無染色標本の核小体の抽出についても検討した結果、他の撮像法と組み合せる場合も含めて位相差を用いる場合に高い精度(IoU)が得られることが分かった。また、合成撮像法の利用を想定して合成画像の精度も評価したが、位相差のみを用いた場合の精度が高かった。 病理診断に有用な特徴の探求のため、深層学習により肝細胞癌の識別が可能かを実験的に検討した結果、細胞核1個程度の範囲の画像でも識別可能であることがわかった。そこで、細胞核1個程度の画像でVAEを学習し、学習済のVAEを利用した特徴抽出を試みた。まず、学習済のVAEの潜在空間を低次元に変換することで、教師無しでの領域のセグメンテーションができる可能性が示された。さらに、潜在空間における癌部と非癌部の核の平均ベクトルの差異を利用することで、癌部と非癌部間で核の画像を相互変換できる可能性が示された。これらの新たな機能は癌の特徴の探求に生かせるものと考える。 さらに、診断支援システムを実現する基本機能として、深層学習により抽出した細胞核の特徴量分布を可視化する基本的な機能を実現した。
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今後の研究の推進方策 |
病理組織標本の構成要素と染色法の組合せのうち、未検討のものについてその抽出に適した撮像法およびその組み合わせを探求する。候補としては、無染色標本の細胞核と細胞膜、および肝組織ではHE染色と共に利用される鍍銀染色標本を考えている。また、検討済みの組合せについても、別の有用な評価指標がある場合はその評価指標による評価を実施する。 厚い病理組織標本を撮像した3次元データから病理組織標本の構成要素を抽出し、3次元的な特徴量を含む有用な特徴量を抽出する機能の実現も図る。 特徴量の抽出法としては前年度に検討したVAEを利用する手法をさらに発展させ、癌部と非癌部で差異のある特徴を探求する。そして、診断に有用な特徴量を抽出し、その分布を可視化する機能を持つ診断支援システムを実現する。
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