研究課題/領域番号 |
22K12877
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90130:医用システム関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
稲村 昇 近畿大学, 医学部, 教授 (20533300)
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研究分担者 |
丸谷 怜 近畿大学, 医学部, 講師 (50441035)
石井 陽一郎 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), その他部局等, 小児循環器科・副部長 (90573882)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 心雑音 / 電子聴診器 / 電子診療録 / 先天性心疾患 / 心臓超音波検査 |
研究開始時の研究の概要 |
現代の診療録は視覚情報が多いが聴覚情報は少ない。本研究は聴診所見を可視化し、有効活用することを目指す。方法は心雑音を電子聴診器で録音し、音の構成要素(最強点、信号強度、時間、広がり、周波数)を解析する。各構成要素と心疾患の重症度との関係を序列化し、レーダーチャートに表現し電子診療録に掲載する。聴診情報が電子診療録に加わることで、医療者間での情報の共有ができ、診療録に新しい展開が期待できる。
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研究実績の概要 |
症例数の最も多い収縮期駆出性雑音例(肺動脈弁狭窄)で心雑音の解析と心エコーの重症度とのマッチングを行った。対象は肺動脈弁狭窄(PS)を有する先天性心疾患94例(年齢0~31歳:中央値5.5歳)。基礎疾患の内訳は、肺動脈弁狭窄単独(PS)65例、ファロー四徴術前(TOF)15例、ファロー四徴術後(TOF po)14例である。対象を心エコー検査で計測した肺動脈弁上の最大流速(m/sec)が2m/sec未満をtrivial, 最大流速が2m/sec から3m/sec未満をmild, 最大流速が3m/s から4m/sec未満を moderate, 最大流速が4m/sec以上をsevereと層別化した。方法は電子聴診器を使用し、心雑音をデジタル録音した。心雑音収集ポイントは胸骨右縁第II肋間と胸骨左縁第II肋間から第IV肋間の計4ポイントとした。次に、心雑音の解析にはAdobe社製Auditionを使用し、心雑音の聴取できた心音図波形のI音からII音の間を同定し、音圧:RMS(Root Mean Square)と周波数(計測区間の平均周波数)を解析した。RMSが最大であった聴診ポイントを最強点とした。最強点における音圧、周波数と心エコーで診断したPSの最大流速(m/s)とLevine分類による聴診所見との関係を調べた。 統計はANOVA検定を使用し、p<0.01を有意差ありとした。 結果 1. Levin分類とPSの最大流速は1度が1.8±0.4, 2度が2.4±0.2, 3度が3.4±0.2, 4度が3.8±0.4 (p=0.001)で有意差を認めた。2. Levin分類と音圧(dB)はp=0.07、周波数(Hz)はp=0.01と4群間で有意差を認めなかった。しかし、3度と4度を比較すると、音圧は3度-31.3±0.1dB、4度-28±2.2dB、周波数は3度 16.7±2.7Hz、4度 46.7±6.8Hzと大きな隔たりがあった。結語:心雑音で心疾患の重症度を層別化するには現状のLevine分類で可能であった。心雑音の解析では重症例程層別化ができる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究の進め方は【2022年度】心雑音の収集と解析(録音、心エコーによる重症度判定), 【2023年度】2.心雑音の解析と心エコーの重症度とのマッチング、【2024年度】レーダーチャートの作成である。集める心雑音の目標症例数は、収縮期駆出性心雑音(大動脈弁狭窄、肺動脈弁狭窄)各20例、収縮期逆流性心雑音(僧帽弁閉鎖不全)20例、拡張期逆流性雑音(大動脈弁閉鎖不全)20例で合計80例である。2年間で80例を目標としており、2023年度は 収縮期駆出性雑音118例(肺動脈弁狭窄94例、大動脈弁狭窄24例)、収縮期逆流性雑音17例(僧帽弁逆流)、拡張期逆流性雑音16例(大動脈弁逆流5例、肺動脈弁逆流11例)で合計151例の雑音を集めることができ、心疾患によっては目標数を大きく上回った。しかし、昨年も課題であった心疾患の種類によるばらつきが解消できなかった。特に、拡張期逆流性雑音(大動脈弁閉鎖不全)が少なかった。そもそも発生数が少ないことも理由の一つであるが、これらの雑音は他の雑音に比べ雑音の音量が小さく、聴診で見つからないこともある。更に、電子聴診器での解析でも音圧が計測できないため軽症例が見つかりにくく、見つかっても解析ができない。これらの心雑音については心エコーによる重症度と雑音による重症度を定義しなおす必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の研究目標は心雑音の解析と心エコーの重症度とのマッチングであった。症例数の最も多い収縮期駆出性雑音例(肺動脈弁狭窄94例)で行ったところ、肺動脈狭窄の程度と音圧には正の相関関係を認めた。一方、周波数には相関関係を認めなかった。しかし、音量が大きくなると周波数に差が出てくることが分かった。これは、音量が大きいと音の性質が変化するものではないかと考える。これまでの研究経過から収縮期駆出性心雑音(大動脈弁狭窄、肺動脈弁狭窄)は音圧による重症度の層別化が可能であると判明した。一方、収縮期逆流性心雑音(僧帽弁閉鎖不全)、拡張期逆流性雑音(大動脈弁閉鎖不全、肺動脈弁閉鎖不全)は症例数も少なく、今後の増加も見込めない状況である。しかし、音量の大きな重症例に限れば、周波数で層別化できる可能性が示唆された。これらの心雑音については心エコーによる重症例に特化し、周波数を解析することで重症化する前を捉えることができないかを試してみたい。このため、mildと moderate,+severeの2群で検討する方が良いのかもしれない。最後に、音の解析で収縮期駆出性雑音は心室圧と血管内圧の血圧差を反映し、音圧が重症度と相関するが、逆流性雑音は心室圧と心房の血圧差を反映するが重症化すれば、心房圧が上昇するため必ずしも血圧差を反映するとは限らないため、疾患の重症度基準を見直すことで関係を認めるか再検討する。
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