研究課題/領域番号 |
22K12881
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90130:医用システム関連
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
田久 創大 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 先進核医学基盤研究部, 研究員 (60796473)
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研究分担者 |
松本 謙一郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 放射線規制科学研究部, グループリーダー (10297046)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 量子PET / 陽電子寿命 / フリーラジカル / 放射線治療効果 |
研究開始時の研究の概要 |
切らずに治す究極のがん治療法とも言える重粒子線治療の真価を発揮するため、患者体内の線量分布をその場で非侵襲的に3次元画像化する方法が切望されている。本研究では、放射能分布を画像化する従来PET(陽電子断層撮像法)とは異なり、陽電子寿命を画像化する独自コンセプト「量子PET」を提案し、放射線治療効果の大半を担うフリーラジカルのセンシングが可能かどうかを実証する。陽電子放出核種は、PETにおいて検査薬につける目印として多用されてきたが、放出された陽電子がごく近傍の電子と対消滅して放射線に変わるまでの数ナノ秒の時間差をフリーラジカルのバイオマーカーとする挑戦は世界に類がない。
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研究実績の概要 |
切らずに治す究極のがん治療法とも言える重粒子線治療の真価を発揮するため、患者体内の線量分布をその場で非侵襲的に3次元画像化する方法が切望されている。本研究では、放射能分布を画像化する従来PET (positron emission tomography: 陽電子断層撮影法)とは異なり、陽電子が対消滅するまでの時間(寿命)を画像化する独自コンセプト「量子PET」を提案し、放射線治療効果の大半を担うフリーラジカルのセンシングが可能かどうかを検証する。フリーラジカルは不対電子を持つため、フリーラジカルの濃度が高い環境ほど陽電子が対消滅しやすくなる、つまり寿命が短くなるはずである。 2022年度は、陽電子寿命とフリーラジカルの関係性を調べる基礎実験を行った。TEMPOLは、安定・長寿命なフリーラジカルを分子上に1つ持つ有機化合物である。TEMPOLを純水に溶解させ、0~400 mMまでの濃度のTEMPOL水溶液を作成した。それらの水溶液に薄膜陽電子線源(Na-22)を密着させ、時間分解能が優れたPET検出器で各々測定した。測定データを解析し、1275 keV即発ガンマ線と対消滅放射線の検出時刻差スペクトルを比較した。その結果、TEMPOL濃度が高い溶液ほど、検出時刻差の短い成分が順に増えていった。すなわち陽電子寿命が次第に短くなっていることがわかった。水溶液中のフリーラジカル濃度と陽電子寿命には負の相関があり、何らかの近似式で表現できることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度で予定していた実験が概ね完了したため。PET検出器を使って陽電子寿命測定を行い、フリーラジカルを定量した例は今までになく、興味深い成果と考える。
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今後の研究の推進方策 |
検出器の数を増やす、もしくは高性能な臨床PET装置を使用して、水溶液中のフリーラジカル濃度と陽電子寿命についての詳細を調べる。また、陽電子寿命を画像化するための測定系やソフトウェアの開発・改良を行う。さらに、重粒子線照射中のバッググラウンド放射線が多い環境下で、どの程度正確な測定が可能かどうかを実験的に調査する。
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