研究課題/領域番号 |
22K12903
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90140:医療技術評価学関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
張 麓ルウ 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (50392634)
|
研究分担者 |
花田 幸太郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究主幹 (00357790)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
|
キーワード | 生分解性マグネシウム / 初期分解挙動 / 局部的分解 / In vivo / In vitro / 表面分析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は新規生分解性材料として期待されているMg材料のIn vitroとIn vivo両試験間の相関性解明を目標とする。Mgが生体環境下で表面から内部にかけて次第に分解する現象に着目し,数種類の医療応用が期待されているMg材料を対象に,X線光電子分光法や蛍光X線分析法等を用いて,In vitroとIn vivo試験におけるMgの化学的構造等の三次元的・経時的分析評価を行う。In vitroとIn vivo試験における生分解挙動とその関連性を解明し,生体内のMg分解挙動を適切に再現できるIn vitro試験法を確立し,これによって生分解性医療機器の開発促進に資することを目指す。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は,医療応用が期待されている生分解性Mg材料を対象に,In vitro試験(溶液浸漬)とIn vivo試験(家兎埋植)における材料の生分解挙動とその関連性を解明し,生体内のMg分解挙動を適切に再現できるIn vitro試験法を確立することである.令和5年度では,In vivo環境における分解初期のMg表面局部的分解の原因解明を試みた.昨年度の研究結果を踏まえて,純Mgの細胞培養液(DMEM+10%FBS)への浸漬試験で,静置した試料表面上部と下部近傍のMg2+イオン濃度とpH値を測定すると共に,走査電子顕微鏡(SEM)及びX線光電子分光器(XPS)を用いて表面分解生成物の観察と組成分析を行った.その結果,In vivo環境における試料の局部的な分解はMg2+イオンと重炭素イオンの不均一分布に起因することが分かった.Mg2+イオン濃度が高い場所近傍では,水酸化物イオンOH-がMg2+イオンに引き寄せられるため,pH値が上昇し,緻密なCa-phosphate保護層が優先的に形成され,Mgの初期分解の抑制が観察された.一方で,pH値が中性付近近傍では,Ca-phosphate保護層の形成よりもMg(OH)2とMgCO3等の分解生成物が優先的に析出し,それら分解生成物層の亀裂や局部的な剥離が観察された.更に,CO2濃度を0%から10%まで変化させたIn vitro試験では,重炭素イオン濃度がMgの分解挙動に影響する重要な因子であることを改めて系統的に確認できた.In vitro試験の結果を受けて,In vivo試験で観察されたMg表面の局部的分解も溶出イオンの挙動や動物の動作によって局所的に生じたMg2+イオン濃度と重炭素イオン濃度の差に起因すると結論付けた.得られた当該成果により生体内のMg分解挙動を適切に再現できるIn vitro試験法の確立に向けて大きく前進した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の各実施項目の進捗状況を以下に示す.若干の研究計画の見直しはあるものの,研究目標に対し概ね計画通りに進んでいる.以下の実施結果から,浸漬試験と埋植試験の両試験における初期分解過程において,Mg表面の局部的な分解挙動に影響する重要な因子(Mgイオン濃度及び重炭酸イオン濃度)を明らかにすることができた.現在,これまでの研究成果を論文としてまとめており,国際学術誌に投稿する予定である. 【実施項目1】In vitro浸漬試験 Phase I:純Mg板状試験片のDMEM+10%FBS細胞培養液の浸漬実験計画を見直し,更に5日と10日の浸漬実験を追加実施し,外観観察と元素分析,及びpHやMg溶出量等の測定を実施した後,実施項目4の評価を行った.また,炭酸ガスの濃度変化(0%、5%、10%)による分解挙動への影響についても同様の評価を実施した.上記追試に伴い,WE43及びFAsorbMg合金の浸漬実験は本年度実施しなかった. 【実施項目2】In vitro浸漬試験 Phase II:実施項目3の実験計画前倒しに伴い本実施項目を項目5と並行して実施する計画に変更したため,本年度は実施しなかった. 【実施項目3】In vivo埋植試験:純Mg板状試験片を家兎大腿骨端部,背面皮下にそれぞれ埋植し,所定の埋植期間(30,90日)後,外観観察と元素分析等の測定を実施した. 【実施項目4】表面・断面の化学組成・結合分析評価:実施項目1,3において得られた分解試験片について,表面形状観察,分解生成層断面の元素マッピング,XPSによる分解生成物等の表面及び深さ方向の元素・化学結合状態の分析を実施し,分解生成物の同定と初期分解メカニズムの解明を行った. 【実施項目5】生体内のMg分解挙動を適切に再現できるIn vitro試験法を確立:本実施項目については最終年度実施予定のため本年度実施していない.
|
今後の研究の推進方策 |
【実施項目1】In vitro浸漬試験 Phase I:WE43及びFAsorbMg合金のDMEM+10%FBS細胞培養液等への浸漬実験を実施し,実施項目4へ提供する。 【実施項目2】純Mg, WE43及びFAsorbMg合金試験片を海綿骨ブロック(pcf20)に挿入し,各種溶液に所定の期間(10日まで)浸漬し,外観,pH,分解速度,Mg溶出量,マイクロCTによる体積変化等のデータを取得後,実施項目4へ提供する. 【実施項目3】昨年度実施済み. 【実施項目4】表面・断面の化学組成・結合分析評価:実施項目1から3において得られた分解試験片について,表面観察,分解生成層断面の元素マッピング,XPSによる分解生成物等の表面及び深さ方向の元素・化学結合状態の分析を実施し,各種溶液や試験片材質による分解生成物と分解メカニズムの影響について検討する. 【実施項目5】生体内のMg分解挙動を適切に再現できるIn vitro試験法の確立を検討する.
|