研究課題/領域番号 |
22K12904
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90140:医療技術評価学関連
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター |
研究代表者 |
藤巻 康人 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 技術支援本部地域技術支援部城南支所, 主任研究員 (70392305)
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研究分担者 |
坂本 知昭 国立医薬品食品衛生研究所, 薬品部, 室長 (40311386)
小野里 磨優 東邦大学, 薬学部, 講師 (50610094)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 蛍光量子収率 / マッピング / 医薬品評価技術 |
研究開始時の研究の概要 |
蛍光量子収率(Photoluminescence Quantum Yields;PLQY)は、物質の置かれている環境や状態、温度などに極めて敏感に応答する値である。本研究では、自作アタッチメントを取り付けたPLQY測定装置を用いて固体試料表面での局所的なPLQYを計測し、想定外の混入物や不純物の存在を検知できる新しい評価手法(PLQYマッピング法)を確立する。 PLQYマッピング法によって、従来技術では捉えられなかった想定外の混入物や不純物が固体試料表面上のどこに存在するか適切に検知できるようになり、医薬品固形製剤など事故的混入物や不純物が許されない産業分野では特に有効な技術として活用できる。
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研究実績の概要 |
本研究では、自作アタッチメントを取り付けた蛍光量子収率(Photoluminescence Quantum Yields;PLQY)測定装置を用いて固体試料表面での局所的なPLQYを計測し、想定外の混入物や不純物の存在を検知できる新しい評価手法(PLQYマッピング法)を確立することを目的とする。 2022年度は、PLQY測定法を混入物・不純物検知およびマッピング法へ展開するための初期検討として、固体試料に対するPLQY測定の適用性を検討した。また、本研究専用の積分球ユニットを新規導入し、従来の測定装置とのデータ同等性を評価した。 市販の蛍光性医薬品を入手し原薬粉体を測定したところ、PLQY値は約37%だった。これを100wt%として、一般的な非蛍光性の賦形剤によって50wt%まで段階的に希釈したが、PLQY値はほとんど変化しなかった。成分含有量が異なってもPLQY値はほぼ一定の値を示したことから、安定性の高い分析評価手法であるが、主薬含量の定量分析などに直接適用することは困難であることが示唆された。一方で、この希釈した混合粉体を打錠機で圧縮成形するとPLQY値は半分程度にまで減少しており、圧縮成形という物理変化をPLQY値の変化として検出できる新たな可能性が見出された。これらの特性は、医薬品の種類や分析装置が異なっても同様に確認できたことから、PLQY測定は分析評価手法として高い汎用性を有すると期待できる。 新規導入した積分球ユニットは試料を積分球の外部壁面に設置するため、積分球を汚染する危険性が少なく、従来の測定装置に比べてより簡便な測定システムである。PLQY値も良好な同等性を示したが、原理的に励起光の散乱や自己吸収の影響は異なるため、今後もデータの同等性については注意深く評価検討していく必要があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度計画のとおり、本研究専用の積分球ユニットを新規導入し、順調にPLQY測定を実施している。モデル試料の測定では、含有量の定量分析には限界があることが示唆されたものの、圧縮成形による物理変化を検出できる新たな測定手法としての可能性を見出した。試料の設置条件が異なる従来の測定装置とのデータ同等性が懸念されたが、比較的高い同等性が認められたことから、研究計画は順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に得られた成果をもとに、マッピングシステムの構築を目指す。新規導入した積分球ユニットは、試料を積分球の外部壁面に試料を設置するタイプであり、当初計画していた装置とは異なる測定システムである。そのため、積分球内に設置した試料に対して光ファイバーの先端を近付け試料直上で局所励起するのではなく、2-3mm程度のアパーチャで励起光を絞った上さらに試料部を部分的にマスクする機構を取り付けて局所励起を実現する。また、試料上で測定点を走査するシステムについては、積分球内の試料上で光ファイバーを走査する機構ではなく、積分球の外部壁面に設置した試料そのものを移動させる機構によりマッピング測定を実現する。以上のように、当初計画よりも機構が複雑化していることから、マッピングシステムの構築に必要な治具の設計や作製に想定よりも時間を要する可能性がある。 新たに計画しているマッピングシステムでは、励起光はアパーチャを通して照射するため、当初計画よりも照射できる光量が減少してしまう。解析に十分な強度の蛍光を検出するためには照射面積の拡大する必要があり、それに伴って多点測定における空間分解能が低下すると考えられる。しかしながら、積分球を汚染する危険性が少なく、より簡便なシステムで高い汎用性を有することから、レギュラトリーサイエンスの観点では工程管理システム(Process Analytical Technology;PAT)としての有用性が期待できる。
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