研究課題/領域番号 |
22K12908
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90150:医療福祉工学関連
|
研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
和田 親宗 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 教授 (50281837)
|
研究分担者 |
北川 広大 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (20965256)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
|
キーワード | 腰痛 / 移乗 / 体位変換 / 動作 / 腰部負荷 / 姿勢 / 計測 / センサ |
研究開始時の研究の概要 |
介護・看護現場における腰痛発生原因の1つとして,腰痛予防に効果のある姿勢や動作の習得が難しいことが挙げられる.そこで,介護・看護作業時の腰痛予防につながる,腰部負荷低減方法を提案し,その有効性の証明を本研究の目的とした.具体的には,臨床場面で,介護者等が直感的に理解でき,かつ制御できる初期姿勢によって,介護・看護作業時の腰部負荷を低減できるか否かを明らかにする.まず,装着型センサによって計測した動作から腰部負荷を推定する手法を開発する.そして,申請者の過去の研究結果に基づいて提案する腰部負荷を低減できる初期姿勢が,他の初期姿勢でおこなわれた動作に比べて,腰部負荷を減らすことを示す.
|
研究実績の概要 |
介護・看護時の「移乗介助」と「体位変換介助」の動作を対象に,腰部負荷を低減するための,臨床場面で利用可能で当事者自身が調整できる初期姿勢の有効性を示すことが目的である.これらの動作の腰部負荷を減らすため,以前から腰部負荷の少ない動作を誘導する初期姿勢,具体的には動作を始める際に,当事者が自分で調整可能な,足位置や体幹姿勢を提案し研究を進めてきた.以前の研究において,模擬環境で有効性を調べたものの,実際の現場とは異なると考えられる.そこで,本研究では,まず姿勢から腰部負荷を推定する方法を確立し,次に実環境下で,提案する初期姿勢の有効性を明らかにする.2022年度は,移乗介助・体位変換時の動作から腰椎圧縮力を推定する方法を確立することを目的に研究を実施した.腰椎圧縮力の実測は難しいため,筋骨格シミュレータ(AnyBody modeling system:以下,AnyBody)により推定することとした.現場で利用可能な慣性センサ式モーションキャプチャシステムを全身に装着し,模擬介助の動作データを取得,AnyBodyへの入力とした.まず,光学式モーションキャプチャシステムによる計測結果を真値として,慣性センサの積分処理による計測誤差の評価をおこなった.次に,AnyBodyで腰椎圧縮力を推定するための移乗介助動作および体位変換動作の筋骨格モデルを過去の知見を基に作成し,患者を模した人形に対し被験者に移乗/体位変換動作をおこなってもらうことで,その妥当性を検証した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は,移乗介助・体位変換介助時の動作から腰椎圧縮力を推定する方法を確立することを目的に研究を実施した.腰椎圧縮力推定のために,過去の研究の知見を基に,筋骨格シミュレータ(以下,AnyBody)での筋骨格モデルを作成した.このモデルを駆動させるための入力データとして動作データが必要である.本研究では現場で利用を想定し慣性センサ式モーションキャプチャシステムを選択・購入した.このシステムは,金属等の少ない環境下で,しかも全身に慣性センサを装着する必要はあるものの,仕様書によれば比較的精度良く計測可能とのことである.しかし,今回の介助動作を想定した環境で,事前に精度検証をおこなった.併せて筋骨格モデルの妥当性も検証した.動作時の体幹の前屈角度および腰部脊椎骨の圧縮力をAnyBodyで算出し,評価に用いた.光学式モーションキャプチャシステムによる動作計測データを用いた場合の前屈角度および圧縮力結果を真値として,慣性センサ式データの精度評価をおこなった.患者を模した10kgの重さの人形に対し,被験者2名に10回ずつ移乗・体位変換動作をおこなわせた.その際の動作を光学式および慣性センサ式モーションキャプチャシステムで記録し,前屈角度および圧縮力を算出した.その結果,動作時間を7秒とした場合,前屈角度の最大誤差は1.5度,平均誤差は0.4度であり,十分な精度であると考えた.また,最大圧縮力は1500Nであり,これは過去の知見とはずれのあることが分かった.被験者数の少なさおよび筋骨格モデルのエラーが原因として考えられる.
|
今後の研究の推進方策 |
まず,圧縮力のずれの原因究明と,必要に応じて筋骨格モデルの修正と妥当性検証をおこなう.次に,2023年度で,当初の予定通り「提案初期姿勢の有効性評価」を実施する.2022年度に作成した筋骨格モデルによる腰部圧縮力推定方法を用い,様々な初期姿勢からの,移乗介助動作および体位変換動作における腰椎圧縮力を比較し,提案する初期姿勢が最小になることを示す.研究室学生10名程度を対象に,患者を想定した人形を対象に様々な初期姿勢からの介助動作をおこなってもらい,提案する初期姿勢の有効性を調べる.提案する初期姿勢としては,過去の研究結果をもとに,移乗介助動作時には両足の左右幅が身長の55%,前後幅が20%になるよう両足を開き,体位変換動作時には前後幅が身長の15%になるよう両足を開かせる.ただ,これらの提案初期姿勢は,動作時間の長短,要介護者との体格差などの環境要因を無視して得られた理論値である.そのため,上記の両足間距離を基準に,身長の15%程度変化させた距離でも計測をおこない,機械学習手法を用いて提案初期姿勢と環境要因との関係を調べ,提案初期姿勢の修正方法を見いだす.機械学習手法としては,試行錯誤的に最適な手法を用いる.
|