研究課題/領域番号 |
22K12922
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90150:医療福祉工学関連
|
研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
水町 光徳 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (90380740)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | 次世代補聴 / 信号分離 / 雑音除去 / ビームフォーミング / ニューラルネットワーク / ステレオ音像 / 知覚的最適化 / 音情報処理 / 補聴 / 指向性制御 / 音像幅制御 / 知覚的目的音強調 |
研究開始時の研究の概要 |
高齢者や聴覚障害者の聴こえを支援する補聴器は、個人の聴力レベルに応じた自動調整や雑音除去機能など進化し続けている。一方、様々な音が混在する生活環境には、補聴器利用者が聞きたい音だけなく、報知音や警告音のように必要な音響イベントも存在する。本研究では、従来の補聴の考え方とは異なり、外界の音情報を損なうことなく、目的音の聞き取りやすさの向上を目指す。そこで、指向性制御により目的音を分離抽出し、ステレオ音像幅制御により音空間の音像幅縮退と目的音の任意方向への呈示を実現する。
|
研究実績の概要 |
本課題では、次世代補聴システムの構築にあたり、高精度の音源分離と適切な音呈示方式の確立を目指す。音源分離に関しては、小型マイクロホンアレーを用いて、特定方向から到来する音信号のみを強調するための非線形ビームフォーマを構築した。非線形ビームフォーマは、ニューラルネットワークを用いて空間フィルタを最適化することにより、目的音源方向に鋭い指向特性を形成する。一方、適切な音呈示方式では、非線形ビームフォーマを用いて抽出した目的信号を、音の到来方向や音像を含めて、知覚的に適切に呈示することを目指す。 令和4年度は、低周波数帯域における非線形ビームフォーマの指向性先鋭化を実現するために、再帰型ニューラルネットワークの一種である長・短期記憶(Long Short-Term Memory: LSTM)ネットワークを導入し、各種パラメータの最適化を行った。また、広帯域での同時最適化とサブバンドごとの局所最適化の両面から検討した結果、500 Hzで鋭い指向特性を実現することに成功した。 音呈示方式については、ステレオ音源の振幅と位相を同時制御することにより、ステレオ音像幅を適切に調整する方式について検討を行った。本手法の基本アルゴリズムは令和3年度に構築したが、知覚的音像幅を適切に制御するためには、多数の実験参加者の協力を得て聴取実験を実施する必要があった。令和4年度は、これまでに実施した聴取実験結果を活用することにより、ステレオ音源の左右チャネル間相互相関に基づく知覚的音像幅の最適化の可能性を見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非線形ビームフォーミングに関しては、研究計画での目標であったMEMSマイクロホンを用いたマイクロホンアレーを製作し、再帰型構造の導入をともに達成できた。ビームフォーマの性能評価は、客観評価と主観評価を実施する予定であったが、コロナ禍のため主観評価実験は令和5年度へ延期した。 ステレオ音像幅制御に関しては、振幅と位相の同時制御を目指していたが、令和3年度中に基本アルゴリズムを構築した。令和4年度は、多大なコストが必要となる聴取実験の代替として、チャネル間相互相関に基づく新たなパラメータ最適化方法を考案し、その有用性を検証した。従って、当初の計画以上に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
非線形ビームフォーマ出力信号の客観評価と主観評価を実施し、指向性の先鋭化と目的信号に生じる非線形歪みの関係を明らかにする。ビームフォーマ出力の呈示方法と音像幅制御との関係については、信号処理と知覚的観点の両面から検討する。
|