研究課題/領域番号 |
22K12960
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三木 那由他 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 講師 (40727088)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | コミュニケーション / 共同行為 / 言語哲学 / フェミニズム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は共同行為論をもとにコミュニケーションにおける暴力の生成を分析するフレームワークを与え、それにより既存の応用分析哲学的な研究を総合的に捉える視座を提供することを目標とする。ただしここで「コミュニケーションにおける暴力」と呼ぶのは、殴打のような身体的な暴力ではなく、むしろ抑圧や言葉によるハラスメントといった、社会的な不利益の産出である。本研究では、申請者が提唱している共同性基盤意味論(三木(2019)『話し手の意味の心理性と公共性』勁草書房)を用いて共同行為論とコミュニケーション論を接続し、それをもとに共同行為における暴力の生成の分析をコミュニケーションへと拡張する。
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研究実績の概要 |
コミュニケーションにおける特有の暴力のありかたを研究するために、本年度は共同行為における参加者間の力関係の影響を分析することを課題としていた。本年度の研究では以下のことを示すことができた。(1)共同行為はある参加者がその目的から逸脱したときには、他の参加者が非難を与え、もともとの目的へと引き戻すことで、一貫性を持って遂行される。(2)それゆえ、ある参加者の逸脱を他の参加者が非難せず、譲歩したときには、本来の目的からずれた共同行為へと変わりうる(そうした共同行為を「譲歩的共同行為」と呼ぶ)。(3)参加者間の力関係の不均衡は、逸脱のしやすさ、あるいは非難のしにくさの不均衡として共同行為に反映され、相対的に強い力を持つものは非難を受けることなく逸脱することが容易になるため、より自分の意に沿った形で共同行為を変化させることができる。 以上の成果は、査読付き国際ジャーナルJournal of Social Ontology, Vol. 8, No. 1にて論文"Concessive Joint Action: A New Concept in Theories of Joint Action"のかたちで公表された。当該論文は、本プロジェクト開始以前に投稿したものであるが、本年度を通じて査読への応答のかたちで本年度の研究成果を大きく組み込んでいる。ここでは、譲歩的共同行為という現象自体の存在を思考実験を通じて論証したうえで、それが参加者間の力関係の不均衡と関わっているという可能性について論じている。また、関連する議論を『哲学の探究』50号にて論文「共同行為のミニマリズム」でも公表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の研究自体は当初の研究計画にあった通りにおおむね進んでいると判断するが、他方でこのトピックの研究を続けるにあたって、当初想定していなかったいくつかの課題が見つかった。第一に、本研究で共同行為の分析に利用している共同的コミットメントという概念に関して、その同一性基準を明確にしなければ、共同行為の変化という現象を十分に捉えられない。第二に、共同行為への参加者の力関係の反映を捉えるために、より具体的に参加者が持ちうる力について検討し、それがなぜ他参加者からの非難を封じうるのかを論じる必要がある。それゆえ、これらの検討をしなければ、研究計画の次のステップには移れないと考えられるため、全体としては想定よりもやや遅れいてると認識している。
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今後の研究の推進方策 |
共同的コミットメントの同一性基準の検討と、参加者の持ちうる力やそれが他者からの非難の封じ込めに寄与するさまの具体的な検討が必要となった。前者に関しては、コミットメントという概念に関する既存の哲学的研究を参照し、それを共同的コミットメントという特殊事例へと応用することで、共同的コミットメントの同一性基準の提唱を試みようと考えている。見込みとしては、共同的コミットメントがその形成時点における参加者の心理や合意といったすでに確定した事実に基づいて同一性基準が与えられると考えるのではなく、むしろ参加者が互いに非難を与えることなく一貫してともに行動することが共同的コミットメントの同一性基準に関わるというよりプラグマティックなアプローチが必要だということを打ち立てたい。これが達成されれば、第二の問題に関しても、いかなる条件で参加者は他参加者を非難できるのか、いかなる条件で他参加者からの非難を無視できるのかという観点から、具体的な検討をできるようになるだろう。
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