研究課題/領域番号 |
22K12961
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
嘉目 道人 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 准教授 (10761215)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | フィヒテ / カント / ブーバー / 超越論的論証 / 当為 / 循環 / 二人称性 / 社会構築主義 |
研究開始時の研究の概要 |
事業期間のうち、1年目は主にフィヒテ自身のテクストの検討を行い、論理構造の解明を行う。2年目は、哲学史的な影響関係の解明を行う。3年目はフィヒテの「円環」思想の特異性を解明する。4年目は、現代のメタ倫理学・法哲学・社会哲学といった近隣諸分野における当為の扱いを検討する。5年目はフィヒテの「円環」思想を現代的議論の中に位置づける。なお、以上はあくまで目安であり、進捗や順序は前後する可能性がある。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、フィヒテの知識学に内在する独自の論理を、事実と当為(規範性)の関係をめぐる一種の規範主義としてモデル化し、フィヒテの著作そのものの文脈から離れて「現実とは何か」を問い直すための参照軸として利用可能にすることである。その際、フィヒテの立場を現代のメタ倫理学ないし社会哲学的な議論の文脈の中に位置づけることを試みる。なお、2022年度の研究を進めてゆく中で、当為ないし規約と密接に関わる観点として、二人称性について考察することが重要であるという結論に達したため、やや全体の計画に変更が加わる見込みであることは、前年度の「実施状況報告書」で報告した通りである。 さて、当初計画においては、1年目でのフィヒテ自身のテクストの検討に引き続き、2年目に当たる2023年度には哲学史的な影響関係の解明を行うとしていた。 こうした計画の下で、7月に「初期フィヒテの超越論的論証――「人間精神が決して脱出できない循環」を読み解く試み――」と題した論文を、『シェリング年報』第31号に執筆された。これは、前年度のシェリング協会年次大会にて行った講演の内容を修正のうえ論文化したものである。 また、10月には関西哲学会第76回大会において、「フィヒテ『知識学の概念』における「循環」と「円環」の差異について」と題した口頭発表を行った。これは、当初計画においては1年目に取り組むはずであった課題のうち、手を付けられていなかったものである。しかし、フロアとの質疑応答を経て、「循環」と「円環」の関係についてはなお課題が残っていることが明らかとなった。 一方で、二人称性についての考察を深めるため、「パースペクティヴの相補性と根元語「我-汝」――ハーバーマスとブーバーの比較に向けて――」と題した論文を『メタフュシカ』第54号に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では2022年度で完了するはずであったフィヒテの超越論的論証が持つ循環構造の解明は、2023年度まで持ち越すこととなったが、ひとまず完了したと言える。 一方、この循環と彼の「円環」思想の関連については、研究を進めて口頭発表に至ったものの、1790年代後半の論理学・形而上学講義の検討までは立ち入ることができず、さらに翌年度へと持ち越さざるを得ない。 なお、前年度の報告書にも記載した通り、当為と二人称性の関係についての考察を新たに課題に加えることとしたが、これについては順調に進行している。 以上より、全体としては、やや研究が遅れていると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、まず、2年前から持ち越している、循環と「円環」思想の関係についての研究を優先的に進めることが挙げられる。とりわけ、フィヒテの1790年代の論理学・形而上学講義の検討や、カントやライプニッツからの影響関係を探る哲学史的研究が中心となるだろう。また、当初計画で予定されていた、1804年の知識学講義についての研究にも着手する必要がある。 これらに加え、ブーバーやハーバーマス等を参照軸とする二人称性についての考察を、フィヒテの非我論・他者論に関連させる研究を進めることになるが、これは4年目となる2025年度以降の課題とすることが妥当であろう。なお、この作業は同時に、現代のメタ倫理学・社会哲学への応用をも兼ねることになるため、全体としては大きな遅れにまでは至らない見込みである。
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