研究課題/領域番号 |
22K12962
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
源河 亨 九州大学, 比較社会文化研究院, 講師 (10838783)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 嗜好品 / 風味 / 比喩 / 美学 / 美的判断 / 哲学 / 味覚 |
研究開始時の研究の概要 |
飲食物の味の評価を行う際に「優しい味」といった表現がよく用いられる。「優しい」は文字通りには人の性格や行為を表す言葉であるので、こうした表現は比喩とみなせるだろう。しかし、味に対してなぜ人の比喩が行われるのか、優しい味は正確にはどのような意味で「優しい」のかと問われると、答えるのは簡単ではない。本研究はこうした味の評価における比喩の仕組みを明らかにするために、評価に関する哲学や美学、味に関する生理学や脳科学、比喩に関する言語学の研究を参照し、包括的な観点からアプローチする。
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研究実績の概要 |
2023年度は、嗜好品の風味が比喩的に表現される理由を探った。嗜好品に限らず飲食物の風味は比喩的に表現されがちである。そのため、風味一般に関する比喩の説明に加えて、嗜好品の風味がとくに比喩的に表現されがちであることの説明を試みた。 風味一般が比喩的に表現される理由の一つは、風味そのものを記述する直接的な表現(風味だけに当てはまり、それ以外には当てはまらない言葉)が少ないためだと考えられる。また別の理由として、風味は複数のにおいと味からなる複合的な特徴であり、したがって、色や音のような次元的分析が難しいという点が指摘できる(濃さは次元的に分析できるが、ミカンの風味の何かの次元を強めたらリンゴの風味になる、といったことはない)。 次に、嗜好品の風味については、それが鑑賞の対象である点に注目した。お茶、コーヒー、ワインといった嗜好品は、栄養補給というよりも、その味を楽しむために、ある意味で芸術作品と似たような意味で、鑑賞するために摂取されるものである。そのため芸術作品と同様に、その特徴が比喩的に表現される。比喩が使われるのは、風味が文字通りに記述されているのではなく、そこに評価的な要素が入り込みやすいためである。 また以上の研究とは別に、2022年度に出版した単著『「美味しい」とは何か:食からひもとく美学入門』の一部が三省堂の中学二年生用の国語の教科書『現代の国語2』に掲載されることになり、教科書採用にあたって元の文章を一部改訂したり資料を追加したりする作業を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は味の比喩を一般的に検討していたが、本年度は嗜好品という特殊例についての説明を作ることができた。また、本研究の成果として出版された著作の一部が教科書へ掲載されることになった点で、広く研究成果を公開できた。
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今後の研究の推進方策 |
比喩の評価的要素をさらに研究するため、比喩的に表現される特徴と美的性質がどのような関係にあるかを検討する。2023年度の研究では、上述の通り、風味が複数の味やにおいからなる複合体で次元的分析が難しいため比喩的に表現されがちであると指摘したが、複数の性質の複合体であり次元的分析が難しいという特徴はゲシュタルトとしての美的性質にも当てはまる。ゲシュタルトとしての美的性質の研究を手がかりとして、美的判断に用いられる比喩のさらなる仕組みを明らかにすることを試みる。
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