研究課題/領域番号 |
22K12963
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 立命館大学 (2023) 京都市立芸術大学 (2022) |
研究代表者 |
永守 伸年 立命館大学, 文学部, 准教授 (70781988)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 信頼 / 裏切り / 不信 / 秩序問題 / イマヌエル・カント / 倫理学 / 哲学史 |
研究開始時の研究の概要 |
わたしたちはどうして道徳的であるべきなのか。この倫理学の根本問題に対して「信頼」の観点から応答するのが本研究の目的である。近年、信頼研究の学際的な発展に伴って、人と人の信頼関係から道徳性を捉え直そうとする倫理学の構想が注目を集めている。しかし、従来の研究の多くは道徳性を信頼関係が成立する前提とみなすことで、既存の道徳理論を信頼研究に「応用」するにとどまってきた。対して、本研究は信頼関係をむしろ道徳性が成立する前提とみなすことで、信頼研究を道徳理論の「基礎」に据える。そのために、新たに「信頼の多層モデル」を提示することで、「信頼ベースの道徳理論」を確立したい。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、以下の二点である。 (i) 信頼と呼ばれる現象を感情、認知、制度のレベルにまたがる多層的な態度として捉える。 (ii) (i)によって、「どうして道徳的であるべきなのか」という倫理学の根本問題に答える。 これら二つの目的を達成するため、本研究は他分野との学際的な協働によって(i)「信頼の多層モデル」を(a)感情的信頼、(b)認知的信頼、(c)制度的信頼の三段階にわたって確立する。その上で、(ii)「信頼の多層モデル」から道徳の規範性がいかにしてもたらされるのかを示す。 2023年度には、「信頼の多層モデル」の中間層としての(b)認知的信頼を研究した。認知的信頼 は証拠に基づく認知的態度として分析され、ラッセル・ハーディンの”Trust”(2006)に代表される社会科学の信頼研究の多くに共有されている。本研究は認知的信頼の協調促進機能を現代のゲーム理論にそくして明らかにした上で、この機能の限界を、認知的信頼の基本的アイデアを与えた17世紀の哲学者、トマス・ホッブズの社会契約論にしたがって明らかにした。また、これまでの信頼研究の成果を、『信頼と裏切りの哲学』(慶應義塾大学出版会、2024)として公刊した。この著作では、これまで、哲学、心理学、社会学、経済学で個別に展開されてきた議論を統合し、ホッブズ、ヒューム、カントらの哲学を手がかりに、日常的な事例をもとにその謎めいた力を論じつくすことを目指している。とりわけ第一章では、本研究の今年度の主題である「認知的信頼」が主題とされ、一方ではゲーム理論をはじめとする社会科学の信頼研究、他方ではホッブズの社会契約論における秩序問題が問われ、両者を総合する仕方で包括的な信頼理論の構築を試みた。認知的信頼の可能性とともにその限界が指摘されたことによって、制度的信頼をめぐる次年度以降の本研究のプロジェクトにとっての課題も提示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は今年度、信頼研究としては信頼現象の一層としての認知的信頼に焦点を当てる予定だったが、研究が大きく進展したため、感情的信頼、制度的信頼も包括した研究成果を単著『信頼と裏切りの哲学』として刊行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度には、「信頼の多層モデル」の成熟層としての制度的信頼を研究する。制度的信頼 は社会制度にそくした期待として分析され、近年の哲学的信頼研究ではキャサリン・ホーリ ーの”How To Be Trustworthy”(2019)らによって活発に議論されている。本研究は信頼がいか に制度によって支えられるのかを、一方ではカントとヘーゲルの制度論にさかのぼり、他方ではロバート・パットナムのソーシャル・キャピタル論に依拠することによって考察する。
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