研究課題/領域番号 |
22K12966
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
伊藤 遼 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (70853422)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | G. E. Moore / Thomas Reid / 実在論 / 観念論 / 常識の擁護 / 外部世界をめぐる論争 / 実在論と観念論 / 初期分析哲学史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、「外部世界」の実在性をめぐる20世紀初頭の英国における錯綜した論争を「実在論」と「観念論」のあいだの重層的対立構造という観点から整理することで、分析哲学の成立過程に対するよりよい理解を得る試みである。このことで、先行研究が十分に解明できていないと思われる二つの点、すなわち、(a)当の論争における錯綜した対立関係の内実と(b)その論争とムーアやラッセルによる英国実在論批判との関係の解明が期待できる。
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研究実績の概要 |
本年度は、申請書の計画に従い、20世紀初頭の英国における「外部世界」をめぐる論争を相異なる4つの対立軸での「実在論」と「観念論」のあいだの対立からなる重層的対立構造を持つものとして整理することで、ムーアとラッセル、それぞれの実在論をその構造のうちに位置付けるという成果を得た。とりわけ、前者については、その「センス・データ」概念の出自が、彼が「観念論論駁」(1903)において提示する素朴実在論に対して寄せられた古典的(イギリス経験論的)批判への応答に求められることを明らかにした。また、そうした応答が、イギリス経験論批判および「常識」の擁護によって知られるトーマス・リードの立場、とりわけ、ヘンリー・シジウィックが再構成するところのその立場に即したものであることを明らかにした。これらの成果は、『世紀転換期の英米哲学における実在論と観念論:現代哲学のバックグラウンドの研究』(染谷昌義・小山虎・齋藤暢人編著、Ratik、2024)の2章「ムーアの実在論と英国哲学史におけるその位置づけ」(分担執筆)において公表されている。 また、本年度は、昨年度に前倒しで取り組みをはじめた、同時期の Bertrand Russell の言語哲学に対する外部世界をめぐる論争の影響をめぐる研究に関して、その成果の一部を雑誌論文("An Interpretation of the Gray's Elegy Argument")において公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ムーアやラッセルの立場を外部世界をめぐる論争が持つ重層的構造のうちに位置付けるという目標は、本年度の取り組みよって達成できたと考える。また、ムーアが強調する「常識」の観点について、論敵ブラッドリーがどのように理解していたのか、合わせて明らかにすることができた。これは申請時に2024年度の課題として挙げた問いに対する大まかな答えである。この点では、進展は予定よりも順調であるが、他方、こうした答えの詳細を公表するに適切なフォーマットや議論については考察の余地がある。
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今後の研究の推進方策 |
「常識」という観点について、ムーア、スタウト、ブラッドリーの立場を比較検討することを通じて、申請時に2024年度の目標として挙げた、外部世界をめぐる論争とムーア・ラッセルの英国観念論批判とのあいだの関係を明らかにするという課題に取り組む。
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