研究課題/領域番号 |
22K12970
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01020:中国哲学、印度哲学および仏教学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松村 幸彦 東北大学, 文学研究科, 専門研究員 (70803071)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 五次第 / ヘーヴァジュラ / 聖者流 / アドヴァヤヴァジュラ / 究竟次第 |
研究開始時の研究の概要 |
インド後期密教における主要な実践階梯として「五次第」と呼ばれる体系が聖典や流派を超えて広く受容された。その中で秘密集会系聖者流の『パンチャクラマ』が最も著名であるが、ヘーヴァジュラ系など他の流派の五次第については殆ど研究が進んでいない。その状況を打破するため、本研究では流派を超えた横断的な「五次第」の影響関係に着目する。そして顕密両修の学僧アドヴァヤヴァジュラ著の五次第『ヘーヴァジュラークヒヤ』を採り上げ、その批判的な校訂テキストと訳注の作成や他のヘーヴァジュラ系五次第や聖者流の五次第『パンチャクラマ』との比較・解析を行い、インド密教儀礼の展開を明らかにする上で、新たな視座を提供する。
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研究実績の概要 |
インド密教における実践階梯の一つには、生起次第と究竟次第の二次第がある。この両次第はタントラ聖典やそれに属する流派によって異なっている。しかし、ヨーガタントラやヨーギニータントラを兼修する学匠も少なくなければ、特定の聖典の註釈に他の聖典や流派からの引用も度々見い出される。筆者は今までの研究活動において、ヘーヴァジュラ系を中心に両次第の解析を進め、そこに見られる術語や実践内容に聖典や流派を超えて重なり合う部分が見られることが判明し、それらには生起・究竟の両次第を一つに纏めた「五次第」という共通の理念に基づくことに気づかされた。 そこで本研究は、顕密両修の著名な学匠の一人であるアドヴァヤヴァジュラが著したヘーヴァジュラ系の五次第である『ヘーヴァジュラークヒヤ』を中心となるテキストとして採り上げた。『ヘーヴァジュラークヒヤ』はその内容を区分する文言として「身区別次第」、「語区別次第」、「心区別次第」、「一切清浄次第」、「双入次第」が用いられ、金剛念誦などの術語も含め聖者流との共通したものであるため、ヘーヴァジュラ系と聖者流との影響関係が窺われ、流派を超えた視点でインド密教儀礼を研究するに相応しい文献である。 これらを踏まえた上で、本年度は、『ヘーヴァジュラークヒヤ』の批判的な再校訂テキストを作成するとともにその訳注作業に取り掛かった。Dhihですでにトランスリテレーションテキストが発表されているが、写本の読みやチベット語訳との関りから問題点も多く、再校訂の必要がある。その他のヘーヴァジュラ系五次第『ヘーヴァジュラプラカーシャ』なども適宜参照しながら作業に従事した。ここで得られた成果によって、前述したようなヘーヴァジュラ系と聖者流との比較を中心とした流派を超えた視点での研究が可能となると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
チベット語訳との関係などからテキストの確定が出来ていない部分が複数あるが、訳注作業は概ね予定通り進んでいる。その内容に関しても複雑で難解な部分も多くあるため、確定させるにはもう少し時間が必要ではあるが、こちらも概ね予定通り進んでいると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
テキストの確定と訳注作業の完遂と並行しつつ、他のヘーヴァジュラ系観想法文献を用いた内容の詳細な解析を行うことによって、『ヘーヴァジュラークヒヤ』の構造とその背景にある教理概念の特徴を明らかにする。
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