研究課題/領域番号 |
22K12971
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01020:中国哲学、印度哲学および仏教学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
崔 境眞 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (30785415)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | チョムデン・リクぺーレルティ / チベット仏教論理学 |
研究開始時の研究の概要 |
チョムデン・リクペーレルティ(13世紀)は、チベット仏教・カダム派の学僧として知られており、近年刊行された『カダム全書』に彼の著作の筆写本が影印版として多数収録されているほか、彼の伝記や著作物の校訂テキストが出版されるなど、基礎資料が充実しつつある。本研究は、チョムデン・リクペーレルティのチベット仏教認識論・論理学史における思想的な位置付けを明らかにすることを目的とするものである。そのために、彼の仏教認識論・論理学に関する思想をまとめた著作である『論理学七部論書荘厳華』について翻訳および思想研究を行う。
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研究実績の概要 |
本研究課題は、チベット仏教の学僧チョムデン・リクペーレルティ(13世紀)の仏教認識論・論理学に関する思想研究である。近年刊行された『カダム全集』に彼の著作の筆写本が影印版として収録されているほか、彼の伝記や著作物の校訂テキストも出版され、研究資料が充実しつつあるにもかかわらず、チベット仏教における彼の思想的位置づけについて検討が十分になされているとは言えない。本研究では、チョムデン・リクペーレルティのチベット仏教認識論・論理学史における思想的な位置付けを明らかにすることを目的とする。そのために、彼の仏教認識論・論理学に関する思想をまとめた著作である『論理学七部論書荘厳華』を和訳し、それに基づいてチョムデン・リクペーレルティの思想研究を行う。 ①チョムデン・リクペーレルティの伝記『信心の樹』の翻訳(進行中):チョムデン・リクペーレルティの人物像を掴めるために、彼の伝記を読み進めている。校訂テクストはKhams sprul bsod nams don grub氏によって公開されているので、それに基づいて和訳を作成している。 ②チョムデン・リクペーレルティ著『論理学七部論書荘厳華』のテクスト校訂および和訳(進行中):公開に向けて修正・調整している。 ③チョムデン・リクペーレルティの「刹那滅論証」に関する思想研究(進行中):チョムデン・リクペーレルティを中心とした師弟関係に着目し、彼の思想の独自性・特異性を生み出した時代的・思想的背景について考察している。これについて、令和5年9月3日から二週間、オーストリア科学アカデミー南アジア文化・思想史研究所を訪問し、Pascale Hugon博士、Ma Zhouyang博士、そのほか多数の研究者と合同研究会を行い、意見交換をすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
テキストの読解および和訳作成は順調に進んでいるが、思想考察およびその成果を論文にまとめることはやや遅れている。思想的な特徴を見出すためにはチョムデン・リクペーレルティの周辺人物の思想とも比較検討する必要があり、予想以上に時間がかかっている。 現在報告者が注目しているのは、『論理学七部論書荘厳華』の冒頭部に言われる「プラマーナが仏教か」をめぐる議論である。そこにチョムデン・リクペーレルティの独特な意見が見られる。現在はチョムデン・リクペーレルティに影響を及ぼしたと思われる周辺人物の意見を探っている状況である。このテーマに関しては、すでに数多くの先行研究が発表されている。それを踏まえた上で、チョムデン・リクペーレルティの見解を提示することは、従来の議論に重要な視座を提示し、新たな疑問を派生させることにもつながると考えらえる。 また、年度末に報告者の所属機関および住居環境が大きく変化したのも、本研究が予定よりやや遅れている原因の一つである。この問題はすでに解決済みであるので、次年度に引き続き研究を遂行していき、当初の計画通りに、研究成果を次年度中に発表する。
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今後の研究の推進方策 |
①訳注研究成果の発表:『論理学七部論書荘厳華』全文の和訳公開を目標に、それに向けて用意できるものから順次出版していく。 ②『論理学七部論書荘厳華』の講読研究会開催:現在、広島大学の根本裕史教授と隔週で読書会を進行中であるが、それを引き続き行っていく。 ③研究者間の交流:昨年度に続き、今年度にもオーストリア科学アカデミーを訪問し、Pascale Hugon博士らとテクストのリーディングセッションを開催し、意見を交換する。また、11月16日に開催される日本チベット学会においてそれまでの研究成果を発表し意見交換を行う。 ④思想研究成果の発表:以上のような研究活動に基づき、そこから得られた思想研究を発表する。歴史の長い問いの「プラマーナは仏教か」に対して、チョムデン・リクペーレルティが提示する答えと視座をまとめて日本チベット学会で発表する。この問題に関してはすでに国内外の多数の先行研究があるが、今まで考察対象から外れていたチョムデン・リクペーレルティの見解を提示し、そうすることで既存の議論をより拡充していきたい。なお、論理的な「結合」('brel ba)の定義(規定文)をめぐる議論を整理し、チョムデン・リクペーレルティの思想的な立場を明らかにする。カダム派からサキャ派を経て、ゲルク派まで続く、「結合」の定義設定をめぐる議論は、未だ明瞭に整理されているとは言えない。それぞれの中観理解、および論理学理解がそれぞれの主張の背景にあると考える。その中においてチョムデン・リクペーレルティの見解を位置付けし、その背景となった思想や人的影響関係を明らかにしたい。以上の研究課題に関する成果を論文にまとめ、発表・公開する。
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