研究課題/領域番号 |
22K12972
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01020:中国哲学、印度哲学および仏教学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
名和 隆乾 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 講師 (20782741)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | インド初期仏教 / 四聖諦 / 苦諦 / 苦 / 四苦 / 生老病死 / パーリ三蔵 / 輪廻 |
研究開始時の研究の概要 |
宗教における「苦」の定義は救済論の基礎をなす。インド初期仏教におけるその代表的な定義は、生老病死からなる「四苦」説として本邦ではよく知られている。ただしインド初期仏典のうち、比較的古い伝承を残すパーリ三蔵では病を除く「三苦」説が主流である一方、新伝承を多く含む漢訳併行資料では「四苦」説が多く説かれる。また、ブッダの重要な思想的基盤となったヤージュニャヴァルキャの思想では、病を除く生老死のみが言及される。 果たして、インド初期仏教思想史には最初から「四苦」説が存在したのか?換言すれば、ブッダは「四苦」説を教えたのか?本研究では、この問題に国内外に先駆けて着手し、「四苦」成立史の一端を解明する。
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研究実績の概要 |
本年度は学術論文「パーリ三蔵における四苦について」(『待兼山論叢』哲学篇57)を発表した。本論文では,パーリ三蔵より,苦諦の内容を「生」「老」などと具体的に挙げる全用例を抽出した上で,4版(Pali Text Society版,ビルマ版,タイ版,スリランカ版)の間で見られる異同を一覧表として示した。類似の試みは森章司『原始仏教から阿毘達磨への仏教教理の研究』(東京堂出版,1995, p. 191)も行っている。しかし同氏の研究では (1) 部派の相違が考慮されず,また (2) パーリ三蔵諸版の間に見られる異同が考慮されていなかった。拙稿ではこの2点に配慮した用例検討を行い,次の成果を得た。 すなわち拙稿では,パーリ三蔵において苦諦の内容を具体的に列挙する12例について,好ましい読みを提案した。またビルマ版,タイ版が本文を二次的に挿入している可能性のある例を指摘した。なお同2版の読みは,上座部大寺派の伝統説に一致する傾向がある。苦諦の内容を全てBe, Seの読みに従った場合, Gotama仏による初転法輪記事を有する3例で生,老,病,死が, AN 6.63 (vol. 3, pp. 176f.)を除く全例で生,老,死,悲嘆苦憂悩が,ex. 9 でのみ生,老,病,死,悲嘆苦憂悩が説かれていることになり,一貫した構成が得られる。ちなみに夙に知られる通り,多くの場合にPali Text Society版とスリランカ版, ビルマ版とタイ版の読みが一致することも,実例と共に示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記の拙稿で詳細に述べているが,パーリ三蔵における苦諦の内容が,各版で予想を超えて種々に異なっていたことから,当初の研究計画より進捗がやや遅れることになった。しかし本年度,拙稿にてこの状況を整理し得たことで, 計画の次の段階に移り得ることになった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は2024年度が最終年度となる。当初の研究計画では,仏教興起以前とされるヴェーダ文献における生等の用例整理をも構想していたが,上記の予想外の進捗の遅れにより, 本研究課題の期間中には実施しない可能性がある。ただしジャイナ教白衣派古層聖典(seniors)における用例整理については予定通り行う。 本研究課題で作成したパーリ三蔵およびseniorsにおける用例集については,researchmapなど,オンラインでの公開を予定している。また本年度,本研究課題による成果の一部として,四苦の成立史に関わる研究発表を行う予定である。
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