研究課題/領域番号 |
22K12973
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01020:中国哲学、印度哲学および仏教学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鳥羽 加寿也 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 招へい研究員 (80942036)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 漢語音韻学 / 漢語史 / 清代学術 / 古音学 / 音韻学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、主に中国清代の古音学(先秦時代の中国語の音韻を研究する学問)及びその周辺分野(古音学の成果を利用した中国古典の読解や新解釈など)の研究において、清代の学者らの研究手法や立論の背後にある思考様式の変遷を追うことで、清代における古音学の急速な発展の背景および、古音学と清代哲学思想との関連を検討することを目的とする。 本研究の特色としては、思想史の目線からの研究では見落とされることの多い、韻譜(詩文の押韻を整理した表)や音韻表の構成にも注意を向け、その不足を補うとともに、古音学の経学的側面にも目を向ける。
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研究実績の概要 |
本年度は、申請した研究計画に基づきつつも、一部臨機応変に対応を行い、一定の研究成果を得ることができた。本年度に行った活動としては、清代音韻学史における学術態度の変遷の考察と、清代学術を含む清から民国にかけての学問史に関するシンポジウムの開催(類似分野の研究者との共同開催)が主に挙げられる。 夏期に行ったシンポジウムでは、自ら清朝音韻学の重要人物である戴震の学問観とその音韻学手法の関連についての発表を行った。発表では、戴震の今音学には、彼の哲学思想の特徴である、実のところは外来学問を受け入れつつも、表向きは外来学問を排斥するという態度が見られることを指摘した。また広く清代から民国期の学問を専門とする研究者を全国から集めて交流を行った。 その後シンポジウムで発表した原稿を元に、議論の対象を戴震周辺の音韻学者の学問にまで広げ、中国思想の専門誌である『中国研究集刊』に、清代古音学者の今音研究の変遷に関する論文を発表した。 論文では、清代音韻学の開祖である顧炎武と、その研究を受け継いで発展させた江永・戴震との間に、今音に対する態度に顕著な違いがあることを指摘し、その要因を論じた。簡単にまとめれば、顧炎武は今音を、当代音と古音とを結ぶ道具と考え、積極的な価値は認めないが、江永と戴震は今音自体に積極的に価値を認めている。この要因を、顧炎武の復古思想と、戴震の今音の脱外来学問化・儒教化という観点から探った。 本年度の研究は、研究計画全体における基礎部分と位置付けられ、清代音韻学と哲学思想との関連に関して、今後は西学(西洋伝来の学問)の受容に対する調査研究が必要であることを認識した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の遂行において、基礎として位置付けられる、清代の主流の音韻学者たちの学問観と音韻学手法の関連に関して、一定程度の事実を明らかにすることができたため、研究の進展は現時点では順調であるといえる。 しかしながら、当初計画していた、研究データ整理部分の委託など、単純作業に落とし込む方法が思いつかず、本年度は自ら行っており、その影響で遅れが出ている部分もある。
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今後の研究の推進方策 |
研究データの整理に関しては、実際に研究を開始してから、協力者に委託するために作業を単純化するよりも、全て自ら行う方がむしろ効率的であると認識するに至ったため、当初計画にあった協力者への委託を行わない可能性もある。 その他の研究計画の推進方策だが、今年度発見した課題を深める形で、基本的には申請時の計画通りに進めようと考えている。具体的には、清代の非主流音韻学者の著作の調査を進めつつ、今年度の研究発表で認識した、外来の学問と音韻学の関係に対する音韻学者たちの対応や、清代における音韻学の独立化などの問題に関して、音韻学者たち内部からの見方だけではなく、外部からの評価を含めて調査していくことを計画している。 調査の結果は、本年度末あるいは来年度初頃に、論文の形で発表することができるよう、進めていく。
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