研究課題/領域番号 |
22K12980
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01030:宗教学関連
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
坪光 生雄 一橋大学, 大学院社会学研究科, 研究補助員 (10876254)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | ポスト世俗 / ポストヒューマン / チャールズ・テイラー / ジュディス・バトラー / ロージ・ブライドッティ / 宗教と世俗 / 批判理論 / 世俗主義 / 世俗化 / 宗教概念 / 翻訳論 / タラル・アサド / 宗教概念批判 / 宗教言語論 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、「ポスト世俗」という概念の理念的・規範的な側面を明確化することを通じて、宗教学・宗教哲学分野における理論的貢献をなそうとするものである。その際、本研究の特色は、「ポスト世俗」という概念の中心的意義を、「伝統の翻訳」を中心とした言語論的主題の周辺に見出す観点にある。「ポスト世俗」をめぐる今日の議論に影響力をもった思想家の多くは、宗教の言語を世俗の言語へと翻訳するというアイデアに取り組んできた。本研究は、そうした一連の取り組みのなかで、「宗教」と「世俗」とを分かつ従来の概念的境界がいかに争われ、また再設定されつつあるかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、「ポスト世俗的(postsecular)」というキーワードによって捉えられる今日の思想潮流を「伝統の翻訳」というテーマを軸に特徴づけ、この思潮が宗教研究、ひいては広く人文社会科学の文脈においてもつ意義と内実とを明らかにすることを目的としている。近代における政治や社会文化の基調をなしている世俗主義の枠組を、批判的に問い直すポスト世俗的な現代思想の試みを受けて、「宗教」と「世俗」とを分かつ従来の概念的境界がいかに争われ、また再設定されるのか、その動態を検証する。 2022年度から引き続いてチャールズ・テイラーやジュディス・バトラーらの文献の研究を行い、これらポスト世俗的な思想に特徴的な時間性の問題に取り組んだ。とくに「反動」というキーワードとの関連で伝統の多元主義的な構成やディアスポラとしての翻訳の概念を検討することで、ポスト世俗性を単純な過去への回帰の動きではない、より複雑な時間軸によって捉える観点を得た(坪光生雄「反動としてのポスト世俗:ハーバーマス、テイラー、バトラー」)。 また、2023年度からは新たに、近年活発な議論が行われ多くの注目を集めているポストヒューマン批判理論との関連において、ポスト世俗性の広範な意味の一側面を明らかにする研究を開始した(日本宗教学会第82回学術大会個人研究発表「ポストヒューマニズムのポスト世俗性」)。ポストヒューマン批判理論は、ポスト構造主義に代表される現代思想の流れや、フェミニズム、ポストコロニアリズム、障害学、動物論等の批判的な文化批評および社会運動によって促進された、近代人間中心主義批判の動向を広く概括する思想動向である。なかでも、2023年度はとくに、「フェミニズムのポスト世俗的転回」を論じたロージ・ブライドッティのポストヒューマン論においてポスト世俗性がもつ意義の把握を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度からは新たにフェミニズムやポストヒューマン思想といった現代批判理論の動向に関する研究を開始し、ポスト世俗という本研究課題の関心領域を拡大できたことは、本研究にとって大きな進展であった。 一方で、研究成果の発表という点では、学会での研究報告と一般誌での小論の公刊だけでなく、査読付きの学術雑誌への論文投稿を予定していたが、新しい文献の調査研究と原稿執筆に難航し、実現にはいたらなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、ポストヒューマン批判理論におけるポスト世俗性の問題に取り組み始めたが、そこで見出された論点や理念を、他の対抗的な思想と関連づけたり、より広範なポスト世俗思想全般の文脈に位置づけて整理するまでにはいたらなかった。2024年度以降は、いっそう広範な文献調査を行い、ポスト世俗的とされる思想全般を見通しのよい枠組のなかに位置づけ、整理することを目指す。 また、そうした研究成果は、可能な限り早期に論文として、あるいは学会での研究発表の機会に公表することを目指す。
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