研究課題/領域番号 |
22K12997
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
井上 果歩 東京藝術大学, 音楽学部, 研究員 (60908119)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 計量音楽 / ネウマ / 記譜法 / 譜線ネウマ / 抑揚ネウマ / 計量記譜法 / 西洋中世音楽 / 中世・ルネサンス / 音楽理論 |
研究開始時の研究の概要 |
西洋芸術音楽の楽譜には演奏すべき情報の大半が規範的に書かれており、読譜するだけで知らない曲を演奏することが可能であるが、このような楽譜/記譜の特徴はおそらく中世に形成された。ヨーロッパでは9世紀頃に相対的な音の上下を表す抑揚ネウマが使われ始め、11世紀には譜線で具体的な音高を表した譜線ネウマ、13世紀には音の長さを音符の形で区別した計量記譜法が登場し、西洋芸術音楽の記譜法の祖型ができる。本研究の目的は、中世ヨーロッパにおいて抑揚ネウマ、譜線ネウマ、計量記譜法がどのように発展し、また西洋芸術音楽の楽譜/記譜の規範的性格がこれら3つの記譜法の成立のどの段階で形成されたのかを明らかにすることにある。
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研究実績の概要 |
2年目の令和5(2023 )年度は譜線ネウマに分類される楽譜写本約25点(例:GB-Ob Add. A. 286等)を分析し、抑揚ネウマと譜線ネウマがどのように使い分けられていたのか、 それぞれがどのようなレパートリーに用いられる傾向にあったかを明らかにした。譜線ネウマは11世紀頃に登場し、ヨーロッパ各地で瞬く間に浸透したと考えられる。例えばイタリアのアレッツォの修道士であったグイード・ダレッツォは『ミクロログス』(11世紀)においてc音とf音に線を引く記譜法を説明しているが、このような譜線ネウマによる記譜は13世紀のフランス南部アキテーヌ地方にあったサン=マルシャル修道院で実践された楽曲を収めたサン=マルシャル写本群やスペインのサンティアゴ・デ・コンポステラで12世紀に成立した『カリクストゥス写本』でも見られる。 分析の結果、譜線ネウマのうち、サン=マルシャル写本群や『カリクストゥス写本』で用いられているアキテーヌ式ネウマは基本的に典礼音楽(オルガヌムやヴェルススあるいはコンドゥクトゥス等)で用いられていることが分かった。また、12世紀後半頃にパリを中心にヨーロッパ各地で用いられ、計量記譜法の祖ともなった角符ネウマは、特に13世紀以降の大多数の典礼音楽の記譜に見られた。さらに角符ネウマは13・14世紀のロマンス語による世俗歌曲であるトルバドゥールやトルヴェールの楽譜写本でも使われていた。一方で、中世のドイツ語による世俗歌曲ミンネザングにはドイツ式の譜線ネウマが使用されている例もあったが、ほとんどは13世紀半ば以降の写本においてで、12・13世紀においても抑揚ネウマはドイツ語圏で成立した世俗歌曲の楽譜写本で依然として使われていた(例:『カルミナ・ブラーナ写本』(13世紀前半成立))。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年(令和4年)度は抑揚ネウマの分析を中心に行う予定であったが、当初の予定よりも早く終わったため、今年(令和5年)度に予定していた譜線ネウマの分析も前倒して行った。そのため、今年度は譜線ネウマの分析が早く終わり、来年(令和6年)度に行う計量記譜法の分析にも着手することができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は13・14世紀の計量記譜法による楽譜写本約120点を分析し、抑揚ネウマと譜線ネウマ、計量記譜法がどのように使い分けられていたかを考察する。なお、楽譜写本の分析の際に必要に応じて当時の音楽理論書(例:フクバルト(9-10世紀頃活躍)やグイード・ダレッツォ(11世紀頃活躍)、ヨハネス・デ・ガルランディア(1270年頃活躍)、ケルンのフランコ(1280年頃活躍)等の理論書)も参照する。
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