研究課題/領域番号 |
22K13005
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
武田 一文 筑波大学, 芸術系, 助教 (90801796)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | ビザンティン美術 / 中世キリスト教美術 / 聖堂装飾 / 「聖母の眠り」図 / 聖堂装飾プログラム / キリスト教美術 / 十二大祭図像 |
研究開始時の研究の概要 |
ビザンティン聖堂は内壁全面をフレスコ壁画で埋め尽くす。壁画は後世の研究者が「装飾プログラム」と呼ぶ概念に基づいて主題が配置された。ビザンティン聖堂装飾の基本的な概念であるが、しかし近年は個別聖堂の議論に終始し、横断的、通史的に見渡す新たな視点の提供に欠けているのが実情である。 本研究はビザンティン辺境域により古い図像の定型と装飾プログラムが保存されているとの仮定に基づき、11世紀から12世紀にかけて進んだ装飾プログラムの変化を検討する。特に装飾プログラムの核の一つである「十二大祭」図像に注目し、時系列的な図像配置から大祭図像を重視する配置への変遷とその理由を考察するものである。
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研究実績の概要 |
2023年度はキプロス島に遺る中世キリスト教聖堂を調査し、約30の聖堂で壁画の調査および写真撮影を実施した。これらは一般に公開されていないものも含まれており、また通常写真撮影は出来ないものである。キプロス考古局および各地の総主教座より調査許可を得た上で実施した。写真資料は筆者の企図する聖堂装飾プログラム研究の考察に資するものとなった。特にカコペトリア、アギオス・ニコラオス・ティス・ステギス聖堂やアシヌウ、パナギア・フォルビオティッサ聖堂では綿密な調査を実施できた。これらの聖堂は中期から後期に掛けての様々な時代に聖堂壁画が描き続けれられており、主題の選択について考察する上で重要な聖堂である。また聖堂装飾における「聖母の眠り」図像の位置付けの変遷を示唆するものとして、コリアニ、アギア・マヴラ聖堂やクールダリ、パナギア・クリソクールダリオティッサ聖堂を実見できた点は本調査で有意義であった。これらの聖堂についての論文を執筆中である。 併せて、22年度より筆者らによって筑波大学内で管理することになった旧東海大学ビザンティン聖堂調査資料について、本研究の対象となる聖堂を多く含むことから、調査を継続的に実施している。今後、これらの資料は電子データ化を進め、研究者間で広く共有する予定である。23年度はスライド資料の一部を電子化した。資料についての調査成果を日本ビザンツ学会全国大会で発表し、Waseda Rilas Journalにて研究論文として報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外でのフィールド調査に制限がなくなり、ある程度の滞在期間を取って調査を行うことが可能になりつつある。23年度は研究上必要な聖堂を訪問し、撮影が実施できたことで論文執筆も実施できている。一方本務校勤務の都合上、当初実施予定であった冬季の調査が不可能な状態であり、調査実施が出来た聖堂数にやや限りがある点は課題である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き聖堂の実地調査と論文執筆を並行して進めていく。24年度は22年度に続き、夏季にギリシア、ラコニア地方の調査を行う予定である。地方性の強い作例が中心となろうが、辺境における聖堂装飾プログラムは筆者の関心の強いところであり、精力的に資料収集を行いたい。また、24年4月にワークショップで研究発表を行った「聖母の眠り」図像のモティーフ研究について、論文執筆を行う予定である。
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