研究課題/領域番号 |
22K13006
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野村 悠里 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (70770288)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ルリユール / 工芸製本家 / 書物観 / 師弟 / 製本技術書 / 出版文化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は19、20世紀におけるルリユールについて、フランスの伝統的技法に影響を受けた各国の工芸製本家が、どのように製本技術書を執筆し、次世代に製本技術を継承していったのかを考察するものである。とりわけどのような書物観で制作に取り組み著作を残したのか、製作者とその師弟関係に焦点をあて、国際的に展開されたルリユールの継承のかたちを解明することを目指す。19、20世紀は過去に制作されたルリユールの劣化が問題になってきた時代であり、製本家の書物観にも影響したと考えられる。装幀は表紙の外観を論じがちだが、どのような工程で本を制作したのかを解明するため、技術書や著作の分析に基づいた作品の構造的調査を行う。
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研究実績の概要 |
19世紀後半になると、機械化によって素材やデザイン性に富んだ量産本が普及し、伝統的な工芸製本の制作を担う後継者は徐々に少なくなっていった。さらに19世紀後半から20世紀初めは、過去に制作された作品の劣化が問題になった時代であり、各国の工芸家による装幀材料や技法の選択にも影響が及んでいる。本研究では出版文化の変容を踏まえつつ、工芸製本家がどのように伝統的な技術を受け継ぎ、それまでの製本構造や装飾技法に改良を加えていったのかを分析することを目的としている。第二年度は工芸製本家の残した著作物と資料群から、多方面に展開した製本史観ならびに書物観を読み解くことに重点を置いた。初年度において、19世紀後半から20世紀後半の技術書、製本学校の講義録、各機関における著作物やアーカイブの調査を行ったが、資料が複層的に連動していることがわかった。そのため第二年度においても継続し、関連する装幀批評や新聞記事をはじめ、作品展示の写真記録、書簡類などの資料収集に努めた。収集した資料が膨大となったため、工芸製本家と何世代かの師弟に分析対象を絞ることを検討し、現在はアーツ・アンド・クラフツの国際的展開を軸にした長期的な技術の継承過程を追っている。この分析自体は、フランス、ドイツ、イギリスをはじめとする西欧諸国の製本技術書の所蔵館を一覧にしたG.ポラードによる書誌学的研究を発展させるものである。19世紀以降の製本家の技術書は、18世紀に出版された啓蒙思想家による技芸書や事典類とは別の視点で執筆されており、過去の世紀における製本史観、とりわけフランスの製本史や技法に触れていることが大きな特徴である。著作物には、製本工芸家ならではの視点、身体的動作や道具の記述が含まれるため、読解自体が難解な作業となっているが、実物の製本作品やコレクションと比較しながら研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第二年度は計画当初には予定していなかった装幀批評や工芸製本家の書簡類などを収集できた。作品の展示写真は当時の手工芸製本が置かれた状況を分析するためにも重要で、今後の研究を進捗させるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
引きつづき、工芸製本の技法がどのように変容していったのかについて分析を行う。とりわけ、アーツ・アンド・クラフツの国際的展開を軸にした書物観の造成、保存修復の萌芽、師弟関係に着眼した技術の継承過程を明らかにしたい。
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