研究課題/領域番号 |
22K13017
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
久保 豊 金沢大学, 国際学系, 准教授 (30822514)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | クィア・シネマ / 食文化 / 映画祭プログラム / 喪 / ジェンダー / セクシュアリティ / 宣伝・広告 / 情動 / フェミニズム / 映画祭 / トランスナショナル・シネマ / 映画学 / クィア映画 / 食事 / コミュニティ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、クィア映画の登場人物が築くアイデンティティ、他者やコミュニティとの多様な関係をめぐる映画表現と批評の傾向を分析し体系化するためには、「食習慣」の視点がどういう新たな方法論を提示するのかを探ることを目的としている。そのために世界最大のLGBT映画祭である「サンフランシスコ国際LGBT映画祭」の上映プログラムを1977年から2020年まで精査し、クィア映画で食習慣が果たす役割の歴史的変化を明らかにする。クィア映画にみる食事風景の意味、食事を共にする世代、性的指向、人種、民族、ジェンダー、言語の異なる人々同士の関係などについて問い、クィア映画研究と食習慣の研究を接合する可能性を探る。
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研究実績の概要 |
第二年目は、1990年から1999年までに開催されたサンフランシスコ国際LGBT映画祭のプログラムを対象に、本映画祭で上映された映画作品内の描写に加えて、映画プログラムに掲載された宣伝・広告の中にどのどのような食文化をめぐる記述が見られ、1989年以前のものとどう変化したのかを調査した。また、クィア・シネマの先行研究を頼りに、①1990代の「ニュー・クィア・シネマ」に数えられる作品と②メインストリームの観客向けに製作された作品群の共通点と差異について、食表象から整理を行った。さらに、フード・スタディーズにおける新旧の先行研究を精査し、映画学およびクィア・スタディーズとの接合を目指すため、理論的な土台をより大きく広げた。 以下、第二年目の主な研究実績について概略する。第17回表象文化論学会で行った"Framing the Aftertaste of Loss: Food and (In)Digestion in Haruhara-san’s Recorder"では、食事場面が多数登場するレズビアン映画『春原さんのうた』におけるゆっくりとした喪の消化について論じた。フード・フィルムとクィア・シネマをスローシネマの特質と掛け合わせて理解するための糸口を提示することに成功した。明示的に語られることのないクィアネスの味と芽生えについては、「『怪物』に性的マイノリティの子どもたちは救えるのか。「美しい物語」が見えづらくさせたもの」(『CINRA』)においてさらに考察を深めることができた。第二年目の大きな成果としては、食表象を分析する上で、情動と接触の視点は欠かすことができない点であり、その理解を深めるための一歩として投稿した「奥まで触れて──映画にみる接触へのクィアな欲望」(『Fashion Talks...』15号)が採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一年目に引き続き、食習慣や食文化に関する新旧の先行研究を精査し、理論的な枠組みの理解を深め、映画学およびクィア・スタディーズとのさらなる接合に取り組むことができた。食習慣と食文化に関する研究はさまざまな学問分野において発展しており、第二年目は、特に人類学と情動論から有益な知見を得ることができた。また、理論的な拡大だけでなく、研究者ネットワークの拡大もムンバイで開催されたKASHISH Mumbai International Queer Film Festivalへ実地参加したことで達成できた。 研究対象の一つであるサンフランシスコ国際LGBT映画祭/Framelineのプログラム分析は、資料調査のアルバイトを雇用できたことで順調に進んだ。プログラム内容のカタログ化を進められた一方で、これまでの映画祭研究の知見をより精密に整理する必要があると考える。当初の計画の範囲内で進められているものの、査読付学術論文での成果発表が課題として残る。
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今後の研究の推進方策 |
第三年目は、以下の資料整理と研究調査を実施する。 2000年から2009年までのサンフランシスコ国際LGBT映画祭のプログラムに掲載された作品や上映・パフォーマンス等のイベントを検索可能な形へカタログ化する。第三年目が対象とする年代はクィア・シネマの大衆化が急激に進んだ時代である。その時代性を考慮しながら、この年代に家族や性的マイノリティの表象において、どのようなステレオタイプ化がなされたのか、また映画祭プログラムがそのような流れに対してどのような抵抗のプラットフォームになったのかについて検証する。その検証の中で食表象に焦点を当てることで、映画内外のコミュニティと食習慣の繋がりについて分析を行う。 第一年目および第二年目の研究調査とその分析結果に基づき、研究成果の発信を行う。その一環として、英語と日本語での査読付学術ジャーナルへの投稿に加えて、2024年6月の日本映像学会(採択済)、2024年12月の日本映画学会にて口頭発表を予定している。第二年目に築いた外国人研究者との共同研究を検討しており、Society for Cinema and Media Studies、もしくはAssociation for Asian Studiesでのパネル発表を目指す。
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