研究課題/領域番号 |
22K13019
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 静岡文化芸術大学 |
研究代表者 |
南田 明美 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 講師 (50886687)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 在留外国人 / 移民労働者 / 反抑圧的実践(AOP) / ケア / 多文化共生 / 文化的コモンズ / アート / 公立文化施設 / 在住外国人 / 浜松 / 公民館 / 音楽 / コミュニティ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、在留外国人の定住化・高齢化に焦点をあて、音楽を通して、公立文化施設や高齢者施設が、彼らにとって「安心安全な場=コミュニティ」や「文化的コモンズ」(地域創造 2016)として機能するための問題点を整理する。そのことで、理論化と実践化ならびにそれに係る政策提言を試みるものである。新型コロナ蔓延を鑑み、主なフィールドを日本(特に東海地方)とする一方で、海外渡航が可能になった暁には移民国家であるシンガポール、英国、オーストラリアの事例採取を行い、比較研究を実施する。
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研究実績の概要 |
本年度は、浜松市とシンガポールの在留外国人、とりわけ定住化する「移民労働者」(その家族である外国につながる子供も含む)に焦点を当てた。そのなかで、文化的コモンズを形成するには、制度面だけではなく、実践者や参加者の置かれた立場を鑑みる必要があると考える。つまり、「移民労働者」らが抱える抑圧構造や周縁化にも目を向けることが重要である。そこで、分析の視座に、反抑圧的ソーシャルワーク(Anti-Oppressive Social Wark Practice)を取り入れ、外国人労働者らがエンパワーメントされるまでのプロセスや内実を明らかにすることに努めた。その一方で、それらを仕掛けた実践家らにインタビューを実施し、AOPを応用しながら、彼らが外国人労働者のどのような問題を不正義と感じ、その抑圧構造を脱するためにどのような仕掛けや工夫をしたのかについて明らかにした。副次的には、芸術だからこそできることについて解いている。 社会福祉の実践理論であるAOPを社会包摂型のアートマネジメントに援用すること、ひいてはそれを用いて文化的コモンズの形成を考えることの意義は、実践過程において関係者間の権力関係を捉えなおすことにある。とりわけ、芸術実践の場で在留外国人を対象とする際には、企画者・実践者がどうしてもマジョリティとなり、参加者がマイノリティとなる構造がある。対象者をどのように捉え、実践者はどのような態度で当事者らと共に過ごすのか。参加者は、どのようなことにエンパワーメントされたのか。より具体的な提言に結び付けることができることになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の6つの研究とプロジェクトを行った。①浜松市内でのアクションリサーチ「ハマルおんがくプロジェクト」の実施。②浜松市内で実施されている在留外国人を対象にしたアート事業の実施者らへのインタビューを実施し、分析した結果を日本文化政策学会で発表した。③昨年に引き続き週に1度~隔週のペースで「ケア/アート/文化政策」研究会を開催し、輪読会を開催するほか2022年に開催したケアと文化的コモンズに関するシンポジウムを基に論考(共著)をまとめた。④2022年度に実施したシンガポールにおける外国人労働者の詩の運動に関する調査結果の一部を国際学会で発表した。さらに、この事例研究に関して助言を得るためにシンガポール国立大学の研究者らを訪問した。⑤研究分担者をしている科研費基盤B研究課題「多文化共生社会の構築に向けた文化政策のパラダイム転換に関する試論」(研究課題番号:23H00588)も相まって、当初本課題の研究先としていた愛知県立劇場、可児市文化創造センターala、静岡県芸劇場と共にシンポジウムを開催した。⑥これら国内外の調査は、各アウトリーチ活動に反映された。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きアクションリサーチや事例研究を実施するほか、1年目・2年目の学会発表やシンポジウムを基に論文・研究ノート・報告書として成果をまとめていく。具体的には、2024年度は、日本文化政策学会で発表した浜松市内の事例とシンガポールの移民労働者の詩の運動の事例をAOPの理論を援用して論考をまとめたい。さらに、各シンポジウムの内容を整理することで、文化的コモンズの形成に係る理論を提示するまでにはいかないが、問題点の整理には着手できそうな段階にある。
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