研究課題/領域番号 |
22K13029
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01080:科学社会学および科学技術史関連
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研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
有賀 雅奈 桜美林大学, リベラルアーツ学群, 助教 (40756623)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 科学の視覚文化 / グラフィカル・アブストラクト / ダイアグラム / イラストレーション / 科学論 / 図像 / 視覚文化論 |
研究開始時の研究の概要 |
科学ジャーナル『Cell』の論文の説明図を分析し、2000年頃のPCソフトの普及前後でどのような表現上の変化が現れ、それはソフトの性質とどう関係するのかを分析する。また、グラフィカル・アブストラクトについてもどのような表現上の特徴があり、論文本文中の図とどう異なるのかを考察し、科学の議論の中での図の性質の変化を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、論文の図を通じて現代科学の大きな特徴である視覚文化の理解を深めることにある。今年度は特に、生命科学論文における図の「色」をテーマに考察と研究発表を行った。この分析では、科学ジャーナル『Cell』のカラー化が進行していることをデータで示したうえで、そのようなカラー化がなぜ進行したのか、またどのような課題をもたらすのかを考察した。分析の結果、70~80年代はグレースケール中心だったのに対し、90年代以降カラーのグラフィックが増加し、2000年代にカラーのグラフィックの数がグレースケールを超えていたことを示した。また、要因として、デジタル化と実験技術の変化や実験結果の多重化・複雑化、図の出力方法の変化、研究者のモチベーションや図制作方法の変化を指摘した。図の科学的に適切な活用を促すため、研究者へのビジュアル教育や図のリテラシー教育、色の標準化や色による悪意のある誘導の防止策とカラー料金の金銭的負担について検討する必要があることを指摘した。 また、2010年代に広がった新しいタイプ図像であるグラフィカル・アブストラクトの性質や背景を探求すべく、グラフィカル・アブストラクトの表現を分析した。この分析では、科学ジャーナル『Cell』の2021年度のグラフィカル・アブストラクト333枚を収集し、先行研究を参照しながら図の特徴(レイアウトや表現している内容、本文の図との関係等)を分析し、グラフィカル・アブストラクトはどのような点が新しいのか、その背景には何があるのかを分析した。さらに、プロのイラストレーターがどのような視点でグラフィカル・アブストラクトを制作し、評価しているのかについても分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では本年度に論文中の図の変化の分析とグラフィカル・アブストラクトの研究を行う計画としていた。このスケジュールに従い、本年度では論文の図の変化(カラー化)の考察を進め、またグラフィカル・アブストラクトの収集と分析まで終了することができた。 成果として1点目の図のカラー化の問題については本年度中に論文が出版された。2点目としては、グラフィカル・アブストラクトの研究では、プロの評価視点の論文を投稿し、さらにグラフィカル・アブストラクトの性質を考察する論文を現在執筆している。
また、次年度に行う予定の分析の準備も進めている。2~3年目には科学者へのインタビューを実施することを予定しており、現在科学者へのインタビューの設計と準備は終えて、1名へのインタビューを終了したところである。以上のことから、全体として計画通りに進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も研究計画に記載した通りに研究を進める予定である。 24年度の研究計画としては、グラフィカル・アブストラクトの研究を完成させることと、科学者への図の制作の変化、メディアの影響についてインタビュー調査を実施することである。さらには研究費の最終年度であることから、成果を公表・発信し、意見を交換する機会も企画したい。
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