研究課題/領域番号 |
22K13034
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
尹 シセキ 椙山女学園大学, 外国語学部, 講師 (80761410)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | シルクロード / 日本文学 / 司馬遼太郎 / 陳舜臣 / 島田一男 / ミステリー / NHK / CCTV / 井上靖 / 冷戦 / 日中関係 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、井上靖や司馬遼太郎、陳舜臣、及びNHKによる「シルクロード」表象を考察し、その冷戦期における政治性や歴史的意義を解明することを目的とする。具体的には、日本の作家やメディアが中国やソ連、モンゴル、アフガニスタン、インド、パキスタンとの国境周囲で展開した取材活動を調査し、その中で生成した「シルクロード」表象の輪郭を把握する。次に、冷戦期という文脈において「シルクロード」の表象を検証する。さらに、「シルクロード」表象に含まれる「日本」の言説を分析し、冷戦期の作家やメディアが捉えた日本とアジアとの関係性について考察する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、1980年代を中心に日本語の「シルクロード」をテーマとした小説、紀行文、解説書を網羅的に調査し、資料の作成に取り組んだ。1980年から1989年までに出版された図書資料を300点以上見つかっており、現時点においてもまだ大学図書館と公共図書館でその内容を確認し、記録する作業を継続している。また、国立国会図書館にて日中文化交流協会の会報『日中文化交流』を手がかりに、1980年代「シルクロード」紀行文の背景にある作家の現地取材を調査するほか、東京国立博物館東洋館で「シルクロード」関連展示とりわけ解説文を調査し、1980年代の言説がどのように現在のアーカイブに繋いでいるかを考察した。 作家についての個別研究として、司馬遼太郎記念館と神戸文学館で資料調査を行った。司馬遼太郎記念館では、司馬遼太郎の蔵書が展示されているため、「西域もの」を執筆する際に参考にした辞書と事典類を確認することができた。神戸文学館では、陳舜臣の生い立ちと作品についての資料を閲覧し、神戸という港町の性格および中華街の生活史から作家が受けた影響について多く知ることができた。こうした資料と作家による「シルクロード」表象との関連性について、今後丁寧に検証していく予定である。 さらに、網羅的な資料調査と並行しながら、高度経済成長期の日本で多く刊行されている「大陸ミステリー」を一種の「シルクロード」表象として、検証を始めた。作品の事例研究として、島田一男の『中国大陸横断』と『大陸小説集』を例に、戦後日本におけるアジア・イメージの構築と満洲記憶との関係性について考察しており、その成果は2024年度に口頭発表を行った上で、論文として公開する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度まで、勤務先の学部改組が行われており、大学内の業務が例年より大幅に増加したため、科研費の課題に取り組むエフォートが予想より減少する結果となった。2024年度は、遅れた研究活動を取り戻すように努力していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、現在把握している資料をより客観的に分析するために、デジタル・ヒューマニティーの理論を参考にしながら、コンピューター・マイニングを活用した研究を試みる。また、順調に研究調査を推進し、研究成果を発表するために、日本国内と海外の出張を多めに計画していきたいと考えている。 2024年8月には、韓国日本学会の学術大会に参加し、『近現代日本における「シルクロード」関連用語の変遷』をテーマに研究発表を行う予定である。具体的には、現在収集した図書資料をデジタル化した上で、国立国会図書館次世代ライブラリーなどのデータベースも合わせて、データ・マイニングの手法を用いて検証し、「シルクロード」に関する固有名と概念の変遷を考察していく。ほかに、2024年11月には台湾で開催される「東アジア日本研究者協議会第8回国際学術大会」に参加し、島田一男の「大陸ミステリー」について取り組んでいる課題の成果を発表する予定である。さらに、以上の研究発表を行うと同時に、論文を執筆し、国内外の学術雑誌に投稿することも準備している。
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