研究課題/領域番号 |
22K13036
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
有澤 知世 神戸大学, 人文学研究科, 助教 (70816313)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 江戸戯作 / 元禄 / 近松門左衛門 / 山東京伝 / 松浦静山 / 考証 / 雰囲気学 / 菅原洞斎 |
研究開始時の研究の概要 |
近世後期の江戸の文化人の間で流行した考証趣味は、個々の関心に基づく営みであると同時に、共通の関心を持つ人々との交遊の中で行われたものであり、その営為は考証趣味のネットワークの中で捉えるべきである。 彼らの関心は「元禄」にあり、元禄期の文芸や風俗に関する共同研究が重ねられ、新たな俗文芸の源泉となり、その運動は昭和初期まで続く。 本研究では、近世中期~昭和における俗文芸を横断するキーワードを「元禄」と設定し、各時代の文化人が考証趣味のネットワークの中で得た知識や資料を具体化した上で、それらが如何に俗文芸に活かされているのかを明らかにすることで、考証趣味を視座とした新たな文芸史を形成することを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、「元禄」を鍵語とし、近世後期~昭和期における考証趣味のネットワークの内実の解明および、考証の成果と文芸作品との関係について明らかにすることで、新たに考証趣味を視座とした文芸史観を形成することである。設定した三つの小テーマ(A.『画師姓名冠字類鈔』を手掛かりとした考証趣味のネットワークの研究B.近世後期俗文芸における「元禄」についての研究C.明治以降俗文芸における「元禄」についての研究)のうち、今年度は特にA、Bに重点的に取り組んだ。 Aの成果としては、平戸藩主の蔵書コレクション調査をふまえ、江戸の戯作壇と、平戸九代目藩主の松浦静山との交流について、長崎奉行を勤めた江戸の文化人・大田南畝の動向を手掛かりにして論じ、近世後期の知のネットワークを明らかにした「平戸・松浦史料博物館蔵の江戸戯作」(シンポジウム「海港、軍港と人文学」における口頭発表)があげられる。 Bの成果としては、元禄文化を代表する近松門左衛門の浄瑠璃「津国女夫池」が先行する浮世草子を利用していることを指摘した上で、19世紀の戯作者山東京伝の作品における「津国女夫池」摂取の在り方を論じた「「津国女夫池」三段目小考―『一夜船』との比較を手掛かりに―」(『同志社国文学』98号)がある。 さらに、こうした近世後期の文化人たちの自己表現について迫り、彼らの営為を社会的に位置づけた「自序に登場する〈作者〉―山東京伝の戯作から―」(シンポジウム「近世俗文芸の作者の”姿勢(ポーズ)” 」における口頭発表)が、また、本研究の特色である学際的な研究成果としては、近世期に流行した心学を、当時の戯作者がどのように理解し可視化したのかを、「雰囲気」という哲学的な視点を援用して論じた「近世日本文学と雰囲気学―近世絵本にみる「心」と「魂」と身体―」(シンポジウム「EAST WEST ATMOSPHERES」における口頭発表)がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
表現と、それを支える知のネットワークの在り方について、哲学や地理学的、思想史学な視点も取り入れつつ研究した結果、当初の予定よりもより多角的な観点から研究テーマへのアプローチができている。また、日本文学研究の領域以外で口頭発表を行うことで、より学際的な視点に基いた意見交換が可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
近世期・明治期における絵画史研究についてのアプローチを進め、小テーマAについての考察を深めるとともに、引き続き、京伝や近松作品を中心に小テーマBについても研究を進める。また、近世後期の文化人の随筆類に加え、明治の絵師・鏑木清方の随筆などを手掛かりとして、小テーマCについても進めてゆく。
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