研究課題/領域番号 |
22K13044
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
栗原 悠 早稲田大学, 国際文学館, 助教 (00895071)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 日本文学 / 歴史小説 / 幕末-明治維新期 / 1920年代 / 1930年代 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、1920-30年代に数多く発表された幕末-明治維新期を描く諸文学テクストを対象として、その歴史表象のありようを明らかにする。具体的には、従来ほとんどの文学テクストにおいて看過されてきた、当時の歴史学などにおける幕末-明治維新期研究の成果との関係に着目し、それぞれがどのような問題を取り上げ、いかにフィクションのなかに織り込んでいったのかを析出していく。 以上の作業から本研究では、20-30年代において幕末-明治維新期に対する想像力が形作られていく力学を総体的に把握しつつ、その知的なネットワークの可視化を試みる。
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研究実績の概要 |
研究課題二年目となる二〇二三年度については、まず昨年度に行った二つの研究報告をもとにそれらの論文化を進め、以下二つの論文としてまとめた。 (一)『島崎藤村研究』第50号に掲載された「「夜明け前」における経世済民観の形成 尾張徳川家の林政史評価を補助線として」では、前年度に藤村記念館で行った藤村所蔵の尾張徳川家に関わる資料の調査およびそれに立脚した島崎藤村学会での報告を下敷きに「夜明け前」の経世済民観が従来指摘されてきた同時代のマルクス主義者たちによる日本資本主義論争とは別の影響の可能性を提示した。 (二)次年度に『日本近代文学』第110集に掲載決定済の「〈代表〉欠格 島崎藤村「夜明け前」と行政改革としての幕末-明治維新期」では、「夜明け前」における青山家の庄屋というステータスを行政的な〈代表〉として読み替え、幕末-明治維新期の行政改革の流れのなかでこの問題を捉え直し、また、それを1920-30年代における行政の問題と結びつけ、テクストの批評性を探った。 同時代に非常に大きな影響力を有する同作に内在していた問題を明らかにし得たことで、今後ほかのテクストとの関係を検討していく足掛かりが出来た。 また、藤村の問題としては、東アジアと同時代日本語文学フォーラムで行ったパネル報告をもとに、「恐るべき血潮 島崎藤村「伸び支度」にみる人形と月経の表象」を『繍(※異字体)』第36号に掲載した。さらに幕末-明治維新期の研究から出発し、近代文学研究の方法論を開拓した前田愛について『メディウム』第4号に「〈前田愛〉というプリズム 近代文学研究を「開いた」者」を発表した。これらは、課題と直結するものではなく、上記の「夜明け前」の検討による副次的な成果であるが、幕末-明治維新期をより複合的な視点から捉えていく基礎が構築出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題はおおむね順調に進展している。理由は以下の通りである。 (一) 前年度の実施状況報告書に示した通り、すでに行った研究報告に基づいた「夜明け前」に関する論文を二つ投稿することが出来た(一つは次年度公開になるが、掲載決定済)。このうち一つは分野のコア・ジャーナルである『日本近代文学』に掲載されることとなった。一昨年度の前半にはまだCOVID-19の影響で出張に関する行動制限があったので、その分藤村記念館での調査スケジュールに遅れは生じたが、これらは最終的にはおおむね期待していた以上の成果を得ることは出来た。 (二) また、当初は本年度に藤村以外について議論を進めていくつもりではあったが、調査にあたり派生する重要な課題が見えてきたため、これらの作業にあたり、いずれも二つの論文として公刊出来た。研究計画当初には想定していなかった問題ではあるものの、いずれも今後の藤村研究、幕末-明治維新期の文学表象を考えるうえで必要な基礎固めを行うことが出来たと考える。
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今後の研究の推進方策 |
従来、調査を進めていた「夜明け前」論、およびそこから派生した島崎藤村に関係する論を進められたので、これらを博士学位請求論文に加えて単著としてまとめたい。一方、藤村以外の幕末-明治維新期表象については今後早急に形にしていきたいと考えている。
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