研究課題/領域番号 |
22K13053
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
|
研究機関 | 甲子園大学 |
研究代表者 |
浅井 航洋 甲子園大学, 心理学部, 助教 (20882624)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | 長田幹彦 / 日本近代文学 / 通俗小説 / 大衆文学 / 新聞小説 / 著作目録 / 単行本書誌 / 目録 / 出版メディア |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、明治末期から昭和期において小説家として活躍した長田幹彦の著作目録作成を通じ、その著作活動の全体像を明らかにすることを目的とする。幹彦は現代では忘れられた作家だが、デビュー当初は有望作家として谷崎潤一郎と併称され、通俗小説家へと転身した大正・昭和期においても大衆的人気を博していた。本研究では従来低く評価されてきた通俗小説家としての幹彦の再評価を試みる。 こうした幹彦の著作活動を明らかにすることは、明治から大正期の通俗小説の歴史を再検討することにつながる。このことは近代文学において、何が純文学(芸術)とされ、何が通俗小説とされたのか、その編成の力学の解明に貢献できるはずである。
|
研究実績の概要 |
昨年に引き続き、各種目録や雑誌の総目次、データベースなどを調査して長田幹彦の著作を収集した。並行して複写も行い、幹彦著作の網羅に努めている。収集した資料を整理しながら、大正5年以降に幹彦がどのように通俗小説の分野で活躍していったのかを引き続き調査していきたい。 本年度は口頭発表「長田幹彦の新聞連載小説――通俗小説家への転身をめぐって」(日本近代文学会秋季大会)を行った。幹彦が大正5年に通俗小説へと転身していく過程を跡づけながら、『埋木』『虚栄』をとりあげて分析し、その特徴として社会性の導入を指摘した。幹彦の通俗小説が菊池寛や久米正雄に先駆けたものであったと位置付けた。 また、市民向け講座として神戸文学館での講演を行った。幹彦が『神戸新聞』に連載した『妖魔の笛』をとりあげ、幹彦と新聞社との関係悪化により突如として連載終了したため作品としては失敗だったが、地方新聞と中央文壇の作家の関係を浮き彫りにする興味深い事例であることを指摘した。 この他、岩内町郷土館(北海道岩内郡岩内町)に長田幹彦の遺品が寄贈されていることがわかり、訪問して調査を行った。晩年の幹彦に宛てられた多くの書簡や、近松秋江など親交のあった文学者からの絵はがき、幹彦が家族に宛てた書簡、その他創作に関わる資料など多くの一次資料を確認することができた。これらの資料については、現在翻刻と分析を進めている。特に文学者からの絵はがきについては資料紹介として発表する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
幹彦の著作の収集が進み、当初の想定よりもかなり多くの雑誌に寄稿していることが判明した。また幹彦の遺品を調査できたのも想定外の成果であり、今後の調査による進展が期待されるのも理由の一つである。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度も幹彦著作の書誌情報を収集していきたい。特に新聞小説に注目して調査を進めていく予定である。大正期の幹彦は、『不知火』『白鳥の歌』『闇と光』『悪魔の鞭』『続金色夜叉』など多くの新聞小説を手がけている。これらの新聞での掲載状況を調査し、本文を複写してその分析に努めたい。菊池寛や久米正雄が注目されがちな大正期の通俗小説だが、幹彦の作品がそれらとどのように異なるのか、明治の家庭小説から大正の通俗小説という見取り図の中での幹彦の史的位置付けを考えたい。
|