研究課題/領域番号 |
22K13055
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 九州共立大学 |
研究代表者 |
大川内 夏樹 九州共立大学, スポーツ学部, 講師 (10802514)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
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キーワード | 瀧口修造 / 上田敏雄 / シュルレアリスム / ダダ / トリスタン・ツァラ / 翻訳 / 日本近現代詩 / モダニズム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究においては、まず瀧口修造ら日本のシュルレアリスム詩人が、フランス・シュルレアリスム詩を翻訳する際に使用した原典を特定する。その上で、フランス・シュルレアリスム詩のフランス語原文と日本のシュルレアリスム詩人による日本語訳とを比較し、翻訳の特性を明らかにする。その際、可能な限り同時代の他の翻訳者による翻訳との比較を行う。そして、日本のシュルレアリスム詩人の翻訳と、翻訳者でるある詩人の詩を比較し、両者の関係について考察する。
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研究実績の概要 |
本研究では、1920年代後半から1930年代はじめにかけての時期に、瀧口修造、上田敏雄、北園克衛、西脇順三郎、冨士原清一ら、日本のシュルレアリスム詩人が行ったフランス・シュルレアリスム詩の翻訳に注目し、彼らによる翻訳作品の特徴を明らかにしつつ、それらの翻訳作品や翻訳の経験が、日本のシュルレアリスム詩の展開においてどのような意味をもったのかを考察することを目的としている。 令和4年4月から現在までの調査・研究の過程で、本研究の目的の達成のためには、フランス・シュルレアリスム詩の翻訳だけでなく、シュルレアリスムの前史となったダダの作品、とりわけダダの創始者であり、後にシュルレアリスムの運動にも関わったトリスタン・ツァラの作品の翻訳にも目を向ける必要があることが明らかになったため、令和5年度においては、ツァラの作品の翻訳に関する研究成果を発表した。 具体的には、「上田敏雄によるトリスタン・ツァラのダダ宣言の翻訳を読む」(『日本文学』第72巻第7号、2023年7月)では、上田敏雄が1928年2月に雑誌『薔薇・魔術・学説』に発表したツァラのダダ宣言の翻訳と上田自身の詩との関わりを考察した。また、「瀧口修造「地球創造説」論―トリスタン・ツァラ受容との関わりから―」(『解釈』69巻第7・8号、2023年8月)では、瀧口修造によるツァラ作品の翻訳と瀧口の「地球創造説」との関わりを考察した。 また上記の調査・研究に加え、令和5年においては、瀧口や上田といった個々の詩人の詩を個別に論じるのではなく、瀧口らによるシュルレアリスム詩人のグループの作品全体の傾向を考察するための資料収集等を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【研究実績の概要】に記したように、本研究の本研究の目的の達成のためには、フランス・シュルレアリスム詩の翻訳だけでなく、シュルレアリスムの前史となったダダの作品、とりわけダダの創始者であり、後にシュルレアリスムの運動にも関わったトリスタン・ツァラの作品の翻訳にも目を向ける必要があることが明らかになったため、その調査・研究および研究成果の発表を行った分、当初の予定より研究の進み具合が遅れ気味である。 しかし、それにより研究の幅が広がったため、より広い文脈において、日本のシュルレアリスム詩の問題を考えることができるようになっている。とりわけ日本のシュルレアリスム詩人にとって、トリスタン・ツァラの存在が非常に大きいものであったことが明らかになった。 現在は、特に1920年代後半に西脇順三郎を中心に瀧口修造や上田敏雄らによって形成された日本のシュルレアリスム詩人のグループの詩の全体的な傾向と、当時西脇らが発表していたフランス・シュルレアリスム詩の翻訳との関わりについての調査・研究を進めている。この研究では、グループ内の詩人の翻訳や彼ら自身の詩を取り上げ、詩人たちの間での共通点や差異を明らかにしつつ、このグループの文学的活動が、日本におけるシュルレアリスム詩の展開のなかでどのような役割を果たしたのかを考察したいとい考えている。この調査・研究の成果は、令和6年度に論文としてまとめ学会誌に発表できるよう準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、当初の予定通り、瀧口修造や西脇順三郎ら、日本のシュルレアリスム詩人によるフランス・シュルレアリスム詩の翻訳と、瀧口ら自身の詩作品との関係について考察を進めていく。 その際、個々の詩人ごとに考察にするだけでなく、瀧口ら日本のシュルレアリスム詩人たち同士での翻訳や詩の比較、そして瀧口らがグループとしてどのようなことをなしたのかという視点からの考察も行う予定である。 また令和4年度・5年度の調査研究では、国立国会図書館の「個人向けデジタル化資料送信サービス」や、日本近代文学館や神奈川近代文学館の遠隔複写サービスを積極的に活用することで、幅広い調査を効率よく行えたため、令和6年度も引き続きそのような方法での調査を進めたいと考えている。
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