研究課題/領域番号 |
22K13061
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
|
研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | 方丈記 / バジル・バンティング / ムッチョリ / 山田孝雄 / hojoki / basil bunting / Marcello Muccioli / 下位春吉 / Hojoki / Basil Bunting / World Literature / Shimoi Harukichi |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、イタリアの日本研究者ムッチョリ(Marcello Muccioli,1898-1976)による古典名著『方丈記』初のイタリア語訳が、当時イタリアで活躍した日本の知識人との関係の中でいかに行われたのかを明らかにする。次にこのイタリア語訳の更なる流通を追跡し、イギリスの詩人バンティング(Basil Bunting,1900-1985)のアダプテーション作品Chomei at Toyamaに着目して、『方丈記』がどのように欧米で新たな文学生成のきっかけになったのかを考察する。上記を通して、『方丈記』が海外で流通するなかで、その従来の捉え方がいかに変遷したのかを解き明かす。
|
研究実績の概要 |
本研究課題は、20世紀初頭に古典名作『方丈記』が海外でどのように流通し受容されたのか、その一部を明らかにすることを目指している。具体的には、イタリアの日本研究者ムッチョリ(Marcello Muccioli)が1930年に行った『方丈記』初のイタリア語訳を主な研究対象とし、このイタリア語訳の更なる流通を追跡しながら、日本古典文学の国際的な展開の諸相を考察することを目的としている。かかる研究目標のうち、令和5年度(2023年4月~翌年3月末まで)には、以下の研究を実施した。 まず海外の資料館を通して、ムッチョリの伝記的な情報を収集し、日本を含め、彼の東洋観を明らかにした。彼は1930年代のイタリアにおける日本関心の高まるなか、日本研究をはじめ、戦前のイタリアに日本文学の紹介に深く関わっていたことを明らかにした。 次にムッチョリと日本人(下位春吉や山田孝雄など)の関係については、国内の資料館で継続して調査を行ったが、現時点では彼らの直接的な関係を示す痕跡は確認できていない。 なお、ムッチョリの『方丈記』訳の更なる受容を明確にするため、イギリスのモダニスト詩人バジル・バンティングの『方丈記』の捉え方について調査を行った。バンティングと戦前のイタリアで活躍したモダニスト文学者(パウンド、エリオット、イェイツなど)の関係を中心に、先行研究の整理と文献収集を行った。同時にバンティングの英詩Chomei at Toyama(1933)を分析し、彼の『方丈記』の解釈を考察した。特に日本の古典文学を英詩の題材にされた理由と、彼が『方丈記』をどのように評価したのかについて検討を加えた。 これまでに得られた研究成果の一部は、『説話文學研究』第58号及び『早稲田大学国際文学館ジャーナル』第2号に発表した。なお、研究成果の一部を研究論文としてまとめ、英文の学術誌への投稿を準備中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究期間中に、バンティングの『方丈記』受容に関しては、バンティングの資料が残されている、イギリスのダラム大学付属図書館及びアメリカのシカゴ大学図書館とやり取りし、関係する情報を収集することができた。調査中に得られた情報は、論文執筆に一助となり、研究成果の一部を発表することができた。 これまでの調査では、ムッチョリと日本人(下位春吉と山田孝雄)の直接的な関係を指し示す資料は確認できていないものの、下位春吉が国文学者の山田孝雄と、ローマ字会と深い関係を持っていた地球物理学者の田中館愛橘との関係を持っていたことが確認できた。今後、継続して下位とムッチョリ訳『方丈記』とのかかわりに調査を行う。 さらに本研究期間中に予定していた、下位春吉のイタリアにおける文学活動に関する先行研究の整理も行った。下位がイタリアで文芸誌を作り、日本の現代文学を中心に日本文学の紹介に努めていたことが確認できた。 上記のため、本研究期間中の作業は順調であり、一部の研究成果を発表することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は、引き続きムッチョリと日本人の関係について、国内外の資料館で調査を行う。特に1930~40年代という時代空間のなかで、日本の知識人らがイタリアの日本研究者となぜいかなる関係を持ったのか、『方丈記』の海外受容の観点から研究を続ける。
また、該当時期の西欧では、日本文学に関する研究及び関心は、日本の古典文学に集中していたなか、下位春吉など一部の日本の知識人が、どのような理由で日本の現代文学の海外紹介に努めたのかについても調べる。戦前の西洋における日本の現代文学への関心について、特に海外の文芸誌や新聞などを中心に調査を行う。
|