研究課題/領域番号 |
22K13067
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
丸谷 徳嗣 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (10866560)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2026年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 南部文学 / 公民権運動 / 人種 / クィア理論 |
研究開始時の研究の概要 |
主に1940年代後半から1960年代半ばにかけて発表された南部文学作品のなかでも、特に自伝的要素を反映する作品を分析の対象としながら、南部共同体における自我形成の過程において人種イデオロギーがどのように個人に内面化されるのかという問題を検証する。クィア理論を用いることで、子どもの表象を社会規範に対する批判・抵抗が生成される場とみなす。南部作家が人種差別を社会問題としてだけではなく自我の意識の問題として探究するさまを系譜学的に記述することで、社会規範と自我の間の葛藤を浮き彫りにする。
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研究実績の概要 |
2022年度は研究計画の初年度にあたるAllen Tate後期の詩作(The "Maimed Man" Trilogy)について、文献を収集・渉猟しつつ、論文の執筆へ向けて準備を進めた。計画当初は単発の論文として成果をまとめるつもりでいたが、作品考察と同時に歴史的な背景や理論的な枠組みについても調査を進めた結果、本研究全体を最終的に書籍としてまとめることを目標とすることに軌道修正した。 2022年度の研究は後述する通り少し遅れているが、その成果は書籍のイントロダクションに組み込むべき内容として、2023年度以降ドラフトを執筆していくことになるだろう。 具体的には、自身の幼少期にアフリカ系アメリカ人のリンチ死体を目撃したという経験を題材とした "The Swimmers"について、自伝的な作品と称される事実に反して、描かれるリンチが事実であるかどうかが疑わしく、テイトの作為が少なからず入り込んでいたことがわかった。とりわけ完成度の高い詩として評価されている本作にこのような事実が指摘されているのは、詩人テイトが詩作を通じて自己を、単に探求するだけでなく、美学的・文学的に構築・形成しようとしていたことの表れであるように思われる。 この詩の主題のひとつが南部人としての人種差別への罪の意識であることに鑑みれば、テイトがアメリカを代表する批評家として掲げていた後期モダニズムのイデオロギーを詩作において実践し、それに成功していたことを示すだろう。 テイトの詩には性的なニュアンスが乏しく、人種に対する意識とセクシュアリティの関係を子ども(時代)の表象に探るという本計画の核心にまでは届かないが、そこに至るまでに必要な20世紀半ばの文学的イデオロギーと書くという行為を通じて自己を構築・形成するという実践の間の連関を素描するのに適した議論になると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
子育て、校務とのバランスをとるのに苦労したため、週末に学会に参加する機会も得られなかった。 基本的には文献・書籍を収集し、読み進め、計画を練り直すなど、ソロワークを通じて論文執筆のための準備をしたが、実際の執筆の作業については、取り掛かり始めたというところまでが現時点での進捗状況である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は研究計画を予定通り進めながら、本プロジェクト全体を書籍としてまとめることを目標に、ドラフトとなる原稿の執筆に取り掛かる。 2022年度ではカバーしきれなかったセクシュアリティの問題を、クィア理論を通じて人種と南部人の自我形成の問題に接続するために、Tennessee WilliamsのOrpheus Descendingの読解と分析を試み、テイトの詩作についての議論に続ける形で、書籍のイントロダクションのドラフトの執筆を進めたいと考えている。 学会への参加がどの程度見込めるか予測が立たないが、基本的には2022年度に引き続きソロワークを通じて研究成果の原型を作っていきたい。
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