研究課題/領域番号 |
22K13068
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
風間 彩香 新潟大学, 現代社会文化研究科, 博士研究員 (20893514)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2026年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2025年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
|
キーワード | シェイクスピア / 性格批評 / キャラクター / 科学観 / シェイクスピア受容 / ジェンダー / シェイクスピア批評 / シェイクスピア研究 / ヴィクトリア朝 / 受容史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、劇中のキャラクターの精神構造や性格造形に注視した性格批評(character criticism)を対象とし、「主観的で女性的な批評」とした旧来のジェンダー・イデオロギーを批判的に検討し、全体像をとらえた上で、近現代のシェイクスピア受容にその痕跡を見出そうとするものである。性格批評をめぐっては、個々の批評スタイルや執筆者の性別、舞台や俳優への影響が問われることはなく、さらに19世紀特有の一過性の批評とされてきた。子ども向け雑誌や学術雑誌を調査することで、性格批評をシェイクスピア批評・研究に正当に位置づけ、さらに演劇資料や二次小説の調査を通して性格批評と現代の受容との接続を図る。
|
研究実績の概要 |
女性が主な担い手であるとの理解から「主観的な批評」とされてきた性格批評(character criticism)理解を見直すため、2023年度は性格批評が特に活発化した19世紀後半のロンドンでのシェイクスピア研究における状況を分析した。前年度に調査に着手した新シェイクスピア協会(New Shakespeare Society)の『紀要』("Transactions", 1874~92年にかけて発行)に掲載された個々の性格批評関連論文が、協会の求める「科学性」を獲得するために、どのような戦略を採用したかを具体的に明らかにした。 まず、英文学の教授であったR.G.Moulton(1849-1924)の論考は、性格分析を「科学的仮説」(scientific hypothesis)とし、「科学」という尺度に基づいた理論化の試みであることを指摘した。また、Countess of Charlemontは王室の系譜学に依拠することでマクベス夫人の人物像を考察するが、この論考には協会の創設者F.J.Furnivall(1825-1910)からの講評が付され、彼は材源研究での知見をもとにCharlemontに反論する。両者のマクベス夫人像は交わるところがないが、両者とも他の学問体系に依拠することで自らの性格分析に論拠を与えていることが明らかとなった。次に、Grace Lathamは劇中のメタファーに注目し、シェイクスピア劇の発展の軌跡やキャラクターの変遷をたどる。これは、韻や格を数値化することで「科学的に」シェイクスピア劇の年代順を特定しようとする協会の方針に即して性格分析を展開しようとしたLathamの戦略であることを指摘した。 以上の研究成果を、『日本英文学会第95回大会Proceedings』に公開し、また第61回シェイクスピア学会で口頭発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
特に性格批評が活発化した19世紀後半のロンドンのシェイクスピア研究界において、アカデミズムに求められた「科学性」を獲得するために個々の性格批評論者の採用した戦略を具体的に明らかにすることができた。しかし、それらの戦略をシェイクスピア研究を含む英文学の学問化という大きな枠組みの中に位置づけることができなかった。この点は次年度の課題としたい。
|
今後の研究の推進方策 |
19世紀後半のシェイクスピア研究で求められた「科学性」は、19世紀後半から20世紀初めにかけて進められたイギリスの大学教育における学問化の動きと密接に関連していると考えられる。この点に関して圧倒的に理解が不足しているので、2024年度は先行研究を参照した上で知識を補い、その枠組みの中で性格批評をとらえ直す予定である。年度末には学会誌等に論文を投稿し、成果発表を行っていきたい。
|