研究課題/領域番号 |
22K13078
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
相木 裕史 津田塾大学, 学芸学部, 講師 (70827360)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 情動 / 視覚文化 / モダニズム / 20世紀アメリカ文学 / 視覚メディア / 情動理論 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、絵画、写真、映画といった視覚メディアがモダニズムの潮流のなかで劇的かつ多様な発展をとげた20世紀前半において、アメリカ文学の主要なテクストが視覚メディア的要素をどのように取り込み、また文学と視覚メディアとのあいだにどのような芸術的混淆がもたらされたのか、とりわけ情動理論の成果をふまえた分析から明らかにするものである。とりわけ、文学テクストにおける身体表象と同時代の視覚メディアの関係性、ならびに身体表象をとおして文学テクストが前景化する情動のネットワークのありようを、キャザーやフィッツジェラルド、カポーティといった作家の分析をとおして明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、主に20世紀前半に書かれたアメリカの小説作品において、絵画、写真、映画という同時代の視覚メディアがいかなる審美的・政治的機能を果たしているかを、「情動」(affect)という概念を参照軸としながら検証することである。本研究がとりわけ注目する作家たち、すなわちウィラ・キャザー、F・スコット・フィッツジェラルド、トルーマン・カポーティは、いずれもジェンダーとセクシュアリティがとりうる多様なかたちに鋭敏に反応したが、それは彼らの作品における身体表象に大きな影響を与えた。彼らの作品における特異な身体表象が、視覚メディアの発展と密接な関係にあったことを明らかにすることを、本研究は目指す。 2023年度は、ウィラ・キャザーの『教授の家』における絵画の機能を検証する論文の改稿作業をすすめた。また、当初の予定には含まれていなかったものの、本研究にとって重要なテクストであることが判明したケイト・ショパンの『目覚め』について、前年度におこなった学会発表の原稿にもとづき、音楽がもたらす情動の発現と逸脱的なセクシュアリティの関係を解き明かす論文をまとめる作業をすすめた。さらに、トルーマン・カポーティ作品と写真の関係について、『遠い声、遠い部屋』や『冷血』といった代表的作品の分析をおこなうとともに、先行研究の調査と分析をすすめた。情動理論については、ジョナサン・フラットリーをはじめとした基礎的研究とともに、遠藤不比人をはじめとしたイギリス文学・文化研究の分野における成果についても分析をすすめ、本研究の理論的基盤をさらに固めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は、前年度に引き続き情動理論についての理論的基盤をさらに固めつつ、ウィラ・キャザーとケイト・ショパンについての論文執筆をすすめた。キャザーについては、前年度から査読付き学術誌への投稿をおこなっているものの、掲載にいたらなかったため、一次資料の再検討をおこないながら論文全体の見直しをはかった。改稿が完了次第、再度査読付き学術誌への投稿をおこなう予定である。また、ショパンについては、発表原稿を大幅に加筆修正した論文を、アメリカ女性作家についての論文集に寄稿した。 当初の予定では、2023年度にF・スコット・フィッツジェラルドについての文献調査をすすめることになっていたが、予定を変更し、トルーマン・カポーティについての文献調査を主におこなった。その結果、中期の代表的作品である『冷血』において、同時代におけるフォトジャーナリズムの発展に鋭敏に反応しながら、写真的な視覚経験を作品の語りに取り込んでいることが確認された。このような、写真に対するカポーティの深い関心が、『遠い声、遠い部屋』をはじめとする彼の初期作品においてどのように立ち現れているのかを、作品の精読をとおして検証をすすめた。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、キャザーとショパンについての論文を、それぞれ学術誌と論文集に発表することを目指す。また、カポーティと写真の関係について、前年度までの文献調査の成果をふまえて論文にまとめ、発表することを目指す。当初の研究計画には含まれていなかったものの新たにショパンについての研究をすすめることになった結果、F・スコット・フィッツジェラルドの文献調査については、本格的に着手できていないが、『グレート・ギャツビー』や『夜はやさし』といった代表的作品については分析をある程度すすめてきているので、2024年度は先行研究の整理をおこないながら、フィッツジェラルド作品と映画的表象の関係についての論文の執筆を開始し、年度内の発表を目指したい。
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