研究課題/領域番号 |
22K13079
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
奥畑 豊 日本女子大学, 文学部, 准教授 (90882837)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 独裁者 / アフリカ / 英語圏文学 / ポストコロニアリズム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はアフリカにおける「独裁者」を直接的ないし間接的に表象した二十世紀後半以降の英語小説を総合的に分析し、それをラテン・アメリカにおける同様のジャンルと比較しつつ、英語圏全体における独裁者文学の潮流の中に定位することを目指す。また、虚構として提示されたテクスト内の独裁者と実在の政治指導者たちとが切り結ぶ関係性や、人種間の摩擦や対立を描出する上での戦略、女性や子供、移民といった被抑圧的な立場に置かれた人々の描かれ方、そしてそれらが孕む専制や全体主義に対する(文学的)抗議や抵抗の可能性について考察する。
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研究実績の概要 |
3年間の研究計画の2年目にあたる本年度は、引き続き基礎文献の読解を進めた。特に、独裁者文学をポストコロニアル的な視点から考える上で重要なテクストとして、アフリカを舞台にしたジョゼフ・コンラッドの中編『闇の奥』(Heart of Darkness, 1899)に注目した。この小説自体は独裁者フィクションではないものの、その主題や構造、モティーフがこのサブジャンルの後年の作品群に大きな影響を与えていることが分かった。この一連の系譜について、時間をかけて考察をまとめた。 同じ視点から、コンラッドの中編を下敷きにしたジョージ・スタイナーの独裁者小説『ヒトラーの弁明――サンクリストバルへのA・Hの移送』(The Portage to San Cristobal of A.H., 1981)を採り上げ、独裁者をフィクションとして表象することが孕むアポリアについて日本語で研究発表を行った。こちらはまだ活字化されていないが、アフリカやその他の地域の独裁者文学に共通する根源的な問題を検討した論考になっている。 また、これらの研究から派生して、独裁者文学とはまた別の観点からコンラッドの作品に応答したJ・G・バラードのSF短編「地球帰還の問題」(“A Question of Re-entry,”1963)についても英語で研究発表を行った。このバラード論は独裁者文学研究のいわば応用編であるが、その発表原稿はプロシーディングスに論文として掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度内に活字になった文章は1本だけだが、2度の学会発表をこなし、新たに複数の論文を形にできる目途が立ったため。
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今後の研究の推進方策 |
まずはコンラッドの『闇の奥』とアフリカを中心とする独裁者文学の系譜との関わりを精査した英語の論文を出版することを目指す。また、スタイナーの小説を軸に独裁者表象それ自体が孕む問題について考察した論文も刊行したい。さらに、ウガンダの独裁者イディ・アミンを描いた独裁者小説についても研究を進め、単独の論文にまとめることを計画している。 なお、幸いにも2024年度は勤務先より海外研修の許可が下り、オックスフォード大学に1年間滞在することになったため、イギリスでの資料収集や学会参加を積極的に行うつもりである。
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