研究課題/領域番号 |
22K13087
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
茅野 大樹 筑波大学, 人文社会系, 助教 (30914139)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2022年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
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キーワード | ベンヤミン / ライプニッツ / マルクス / ジンメル / 都市論 / フロイト / コーヘン / 認識論 / ヘルダー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、後期ベンヤミンの著作に現れる「触覚」概念と無意識的知覚の問題を、前期におけるライプニッツ解釈を中心とした認識論の論点の延長線上に捉える。またライプニッツの影響から形成された近現代ドイツにおける触覚論の歴史と比較することで、ベンヤミンの触覚概念の独自性を明らかにする。それにより、ベンヤミンの様々な時期のテクストに現れる無意識的知覚の問題が、一貫した触覚論的モナドロジーの多様な展開として提示される。
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研究実績の概要 |
本研究課題全体の目的は、後期ベンヤミンにおける身体知覚や無意識の問題を、ライプニッツ認識論の伝統の中で捉え直すことにある。この内2023年度の研究計画では、ベンヤミンの触覚概念の前史をたどるために、18世紀ドイツにおけるヘルダーやレッシングの知覚論や触覚論を考察する予定であった。 しかし2022年度中に行った研究内容により、2023年度中の研究内容を変更する必要が生じた。その主なきっかけは、ベンヤミンとマルクスに関する国際学会での研究発表である。その発表内で後期ベンヤミンの知覚論に直接的な影響を与えた要因として、マルクスを中心とした資本主義と商品に関する分析、フロイトを中心とした無意識の学説、またボードレールやジンメルおける大都市群衆の問題など、ベンヤミンと同時代の思想家たちの重要性を再認識することとなった。後期ベンヤミンの知覚論を解明することを目指す本研究の趣旨に鑑みて、18世紀からの概念史をたどる間接的な研究より、20世紀の同時代の思想家からの直接的な影響を探る方が、より具体的で効果的な研究成果を期待できると判断した。 このような研究内容の変更により、新たな資料の収集や読み込みに時間を取られ、当初予定していた研究実績を発表することができなかった。しかし2023年度中にベンヤミンとマルクスに関するドイツ語の論文を執筆・投稿しており、2024年度中に刊行される学術雑誌での採録が決定している。また2024年度に発表する予定である、ベンヤミンのボードレール論やジンメルの都市論の研究の基礎を構築することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要に述べたように、2023年度の研究内容に関して当初の研究計画と異なる研究を実施したため、計画していた実績を残すことができなかった。この意味で2023年度に限った進捗状況としては、やや遅れていると言わざるを得ない。しかし後期ベンヤミンの知覚論を対象とする本研究課題において、ベンヤミンと同時代のマルクス、フロイト、ジンメル等の思想家との比較研究を行うことで、今後は当初予定していた以上に充実した研究成果を公開することが期待される。 具体的には、ベンヤミンのボードレール論とジンメルによる都市論の比較考察を行う発表を目下準備中である。この成果は2024年度6月末に韓国での国際学会にて発表される。この発表を足掛かりとして、2023年度に行った研究活動の具体的な成果を2024年度の研究実績として公開できるよう鋭意取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題のこれまでの推移として、2022年度には3件の学術論文および学術図書(共著)を発表することができたが、同年度に行った研究内容により、2023年度の研究内容に変更が生じた。それゆえ同年度には残念ながら具体的な研究成果を発表することができなかった。2024年度には、この変更を最終的に研究課題全体のより充実した成果へとつなげることができるよう、具体的な研究実績として発表することを目指したい。 その一つの成果として、2024年12月にベンヤミンのライプニッツ受容を論じた学術図書『ベンヤミンとモナドロジー 関係性の表現』を刊行する予定である。この学術書の刊行も、本研究課題の助成による成果の一部として発表すべく目下準備している。本書は後期ベンヤミンの知覚論をライプニッツ以来の認識論の中に位置づけるための重要な足掛かりとなり、本研究課題全体にとっても重要な業績となるはずである。
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