研究課題/領域番号 |
22K13088
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
金沢 友緒 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 講師 (20785828)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 18世紀 / ロシア / 時間 / 時計 / エカチェリーナ2世 / 啓蒙 / 近代ロシア / ピョートル1世 / ドイツ / 科学 |
研究開始時の研究の概要 |
西欧化政策を推進した18世紀初頭のピョートル1世治下で本格的に導入された機械時計は、外国人技師や輸入品に依存しつつ普及し、時計文化を発展させ、19世紀にはこの時間文化がロシア文学の中にも頻繁に登場するようなる。ロシア社会に可視化された時間が定着するまでの1世紀半は、ロシアが西欧文化を咀嚼するに要した1世紀半であり、「時計がもたらした時間意識の変化」は、物質的な文化の移入が精神的な変革を惹起した典型的な例と言える。時計工場の設置や時計職人の招聘、文書に登場する「時計」と「時間」が、文学作品の舞台や構成、文体に大きな役割を果たすに至るまでの経緯を考察し、近代ロシアの時間意識の変遷を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、18世紀から19世紀前半にかけてのロシアにおける時間意識に注目し、その様相と変化を、同時代の文学作品や書簡等の文書の考察を通じて明らかにするものである。 考察に際しては、ロシア社会における「時計」という科学装置の普及のプロセスを手がかりとし、科学技術がもたらした生活習慣や文化の変化との関わりを踏まえることを念頭においた。 採択初年度は、18世紀前半から後半のエカチェリーナ2世の時代に至るまでの時計受容・普及の過程に関する情報の収集を中心に取り組み、更に同時代の出版物や定期刊行物の中に「時計」「時間」のモチーフを探すことに専念し、結果的に、機械装置としての「時計」に関する調査が多くなった。それに対し、採択二年目である今年度は作業の幅を拡げ、「時計」がもたらした「…時」「…分」「…秒」のような、数値化された時刻表現だけでなく、多様な「時間」を考察の対象とし、詩・小説等の文学作品の中の朝・昼・夜等、一日の時間経過を示す記述や、季節の移り変わりの情景描写等、「時間」についての多様な表現方法に注目し、調査した。具体的なテクストとしては、主に、18世紀中葉から後半にかけて発表されカンテミール、スマローコフの詩や、19世紀ロシアではА.К.トルストイの作品等を取り上げた。 成果の一部については、当初の予定通り、7月実施の第16回国際18世紀学会ローマ大会(ISECS)及びロシアのブリャンスクで開催された研究会で報告(ビデオ、オンライン参加)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年2月ロシア-ウクライナ間で起きた軍事問題は、今なお解決を見ず、ロシアでの資料収集や研究交流が困難な状態が続いている。そのため昨年度に引き続き、今年度もロシアでの調査は断念した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの作業に引き続き、次年度も、18世紀及び19世紀のロシアの出版物におけるそ「時計」「時計技術」「時間」に関する情報と記述の収集を継続しながら、既に入手した資料や情報の考察に時間を割く予定である。採択三年目となる次年度においては、装置としての「時計」のロシア社会における受容プロセスと、文学作品における「時間」に関わる表現方法を掘り下げて考察することになるであろう。 調査のための機関としては、国内では北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターを活用する予定であり、国外では、近代ロシア文学の関係資料が充実しているヘルシンキ図書館等での資料収集の可能性も視野に入れる。 また、研究対象とする18世紀ロシア文学へのアプローチの一環として、2024年度は、ロシア文学研究所(サンクト・ペテルブルク)の研究員であるアンドレイ・ソロヴィヨフ氏を招聘し、オンライン・セミナー(本科研主催、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センタ-共催)を開催することが決定している。
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