研究課題/領域番号 |
22K13089
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
稲葉 瑛志 三重大学, 人文学部, 准教授 (10848980)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | ゲシュタルト / 形態 / ユンガー / グンドルフ / ユダヤ / シュペングラー / エルンスト・ユンガー / 全体論 / ゲオルゲ・クライス / 原型論 / 美と政治 / ベン / モダニズム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、戦間期ドイツの文学と政治における、復古的な「形態」概念の流行を取り上げ、「形態」の獲得要求を、人間中心主義の終焉と「新しい人間」をめぐる同時代の自然科学や技術の同時代の言説に照らし合わせて専門横断的に解明することを目的とする。上記の観点から、「形態」を美的・政治的理想に据えて「新しい人間」を構想した作家・思想家エルンスト・ユンガーと詩人ゴットフリート・ベンの戦間期の作品を取り上げ考察し、美的モデルネとナチズムとの共通点と差異を再検討するとともに、「形態」の概念史を再構成することを本研究の最終的な課題とする。
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研究実績の概要 |
本研究課題に関する、2023年度の概要は以下の通りである。 前年度から引き続き、エルンスト・ユンガーの初期形態論についての基礎文献を調査する中で、1920年代の形態論が登場するための思想的背景が十分に研究されていないことに関心を持った。そこから、1910年代から20年代にかけての形態論言説の調査を開始した。とりわけ、詩人シュテファン・ゲオルゲを中心とする文学サークル「ゲオルゲ・クライス」におけるフリードリッヒ・グンドルフの形態論に着目した。師のゲオルゲが詩の中で表現した「ゲシュタルト」イメージが弟子のグンドルフにどのように受容され、展開されたのかを考察した。その際、師弟間におけるゲシュタルトイメージの変容とユダヤ性との関係に着目した。そして、このイメージが、「共生」作用を放棄した全体論に変容した理由と意味を、アカデミズム内外のドイツ・ユダヤの知的状況を背景に明らかにしようと試みた。この研究は、日本独文学会秋季研究発表会におけるシンポジウム「カリスマ教師とその弟子たち 戦間期ドイツにおける人文科学の再生と変容」の口頭発表「ゲシュタルトの誘惑 ゲオルゲ・クライスにおけるドイツ・ユダヤの共生について」で成果を示した。( 2023年10月15日)また、本研究を論文にまとめ、共著として出版することが決定している。 その後、彼らと同時代人でもあったオスヴァルト・シュペングラーの『西洋の没落』を考察対象として取り上げた。その作品の方法論である「歴史形態学」における、学問と芸術のはざまの思考がいかにして成立したのかを考察した。この研究については、現在論文を執筆中である。 また、ユンガーの後期形態論の主要作品"Typus Name Gestalt"の前半部分を抄訳として同人誌『希土』に掲載する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に比べ、教育と研究のバランスをとることができた。そのため、研究のリズムを回復することができ、研究課題に従事することが増えた。 研究対象とする時代を広く設定することで、これまで見落とされてきた重大な問題に気づくことができ、それによって順調に研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
戦間期の形態論を考察するために不可欠なのは、ドイツ文学・思想史における形態概念の成立背景である。今回は「ゲオルゲ・クライス」の高弟フリードリヒ・グンドルフの形態論を取り上げ、その背景を明らかにした。 今後は、彼らと同時代人であったシュペングラーの形態論を考察する。そこでテーマとして取り上げる、学問と芸術のはざまの思考は、ゲシュタルトを論じた文学者や思想家を特徴づけるものであった。この研究を論文にまとめ、学術誌に掲載することを目指す。 その後、形態学と分類学の思考に着目し、さらに研究を進展させることにしたい。 また、ユンガーの後期形態論の主要作品"Typus Name Gestalt"の前半部分を抄訳として同人誌『希土』に掲載し、その後も残りの部分の翻訳を続けることにする。
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