研究課題/領域番号 |
22K13091
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
|
研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
金 志成 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (30822952)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | ポストDDR文学 / 転換小説 / 文芸翻訳 / 現代ドイツ文学 / 転換 / 文芸制度 / カノン化 / 東ドイツ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、1989/90年の「転換(Wende)」を題材にした一連の文学作品を対象に、その過去30年間における作風・受容の変化を「歴史化」という観点から考察する。具体的には、当初は時事的・政治的な性格の強い主題であった「転換」が、90年代半ばから「風刺」や「ノスタルジー」の対象となり、さらなる時間的な隔たりを得た00年代後半以降には現代文学の「カノン」を生み出した過程に着目する。その際には個別の作品分析に加え、新聞の文芸欄に由来する「転換小説」の概念そのものをめぐる言説史を包括的に分析し、カノン形成において「ドイツ書籍賞」をはじめとする文芸制度が果たした役割についても批判的に検証する。
|
研究実績の概要 |
本研究は、ドイツ現代史の「転換(Wende)」とされる1989/90年の壁崩壊/東西統一と文学の関係に取り組むものである。当該主題の「歴史化」がまさに進行しつつある現在、ドイツ本国においては「転換小説(Wenderoman)」の新たなカノンが陸続と書かれ、それらに関する研究の更新が進む一方で、日本国内においては主要作品の翻訳も含め、研究の蓄積がほとんどなされていない。本研究は、そのような状況に鑑み、本年度はルッツ・ザイラーの長編小説『クルーゾー』(Kruso, 原書出版2014年)の翻訳に従事し、2023年2月に白水社の定評あるエクス・リブリス叢書として刊行した。なお、本翻訳企画によってゲーテ・インスティトゥート東京より2020年かけはし文学賞を受賞している。また、東独出身の作家ウーヴェ・ヨーンゾンについての単著『対話性の境界:ウーヴェ・ヨーンゾンの詩学』(法政大学出版局、2020年)によって、第19回日本独文学会・DAAD賞を受賞した。 上記に加えて、最新のリュリコロギー理論を踏まえた近現代ドイツ抒情詩の共同研究に継続的に従事しており(報告者はルッツ・ザイラーによるポストDDR抒情詩作品を担当)、その成果は2023年6月開催の日本独文学会春季研究発表会内のシンポジウム「近現代ドイツ抒情詩の「話者」再考:「リュリコロギー」の批判的受容に基づくケーススタディ」で発表することが決まっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を行うための最も重要な基盤として、研究課題に関わる一次文献のほか、当該分野の先行研究、文学理論、現代史といった二次文献を含む図書の継続的な購入が挙げられるが、これについては現段階において必要な基準は概ね達成されている。ただし、アーカイブ資料などドイツ本国への渡航が必要な文献については、ここ数年のコロナ禍により収集が追いついていないため、今後の現地調査によって補うことになる。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでは主に翻訳に従事していたルッツ・ザイラーのポストDDR作品について、今後は学会・シンポジウム等での口頭発表や論文投稿などの成果発表を行う予定である。現時点では具体的に、日本独文学会春季研究発表会(2023年6月)および2024年2月に東京都立大学でウィーン大学の研究者を招いて主催する国際シンポジウムでの口頭発表、そして両者の原稿を加筆・訂正した論文投稿を行う予定である。また、以上の成果発表のために必要となるドイツでの文献調査を行う。
|